郵便料金の値上げによる請求書業務の影響とは?電子化するメリットも解説
公開日:2024年4月17日 更新日:2024年8月27日
総務省は2024年に郵便料金を値上げする方針を示しています。郵便料金の値上げは2024年秋頃の見込みですが、請求書の発送を郵便で進めている企業はコストの増加が見込まれるため、早いうちからの電子化への移行を検討してはいかがでしょうか。
本記事では、郵便料金の値上げによる請求書業務への影響、請求書の配信を電子化するメリットなどを解説します。請求書業務の効率化やコスト削減を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。
※本記事の内容は2024年3月時点の情報です
TOPICS
郵便料金の値上げに関する概要
郵便料金の値上げは、2024年3月時点では確定していません。しかし値上げする可能性は高いといえます。まずは総務省が2023年12月に発表した郵便料金の値上げについて、概要を確認しましょう。
省令案の内容
総務省は2023年12月18日に開かれた情報通信行政・郵政行政審議会において、郵便料金の改正に向けた省令案を発表しました。まだ意見募集の段階であり、2024年3月の時点では決定事項ではありません。もし正式に実施されれば、封書では30年ぶり、はがきでも7年ぶりの値上げとなります。
省令案の内容を要約すると以下のとおりです。
・定型の郵便封書における25グラム以下と50グラム以下の区分を統合する
・統合した上記区分の料金上限を110円に改正する
・はがきの料金を85円に改正する
今回の省令案で検討されているのは、こうした大幅な値上げだけではありません。2023年に値上げが行われた書留などは据え置きとなり、レターパックや速達といった特定の目的がある送付方法は、より低い値上げ率となる見込みです。
値上げ後の料金
次に、郵便料金を値上げした後の具体的な料金について、確認しておきましょう。区分の変更も実施される可能性があるため、料金以外の変更点にも着目してください。
封書・はがき
今回の料金改定案の目玉となるのが封書・はがきの値上げです。定形郵便物とはヨコ9~12cm×タテ14~23.5cm×高さ1cm、重さ50g以内の郵便物を指します。これらの項目のうちいずれか一つでも外れれば定形外となり、料金テーブルが変わります。
現行では25グラム以下と50グラム以下は別の価格になっていますが、今回の改定ではまとめて110円に値上げされる見込みです。また通常はがきの料金も、63円から85円に引き上がるとされます。
定形外郵便物・特殊取扱郵便物
封書・はがき以外も値上げが検討されています。定形外郵便と特殊取扱郵便物(オプションサービスつき郵便)は、どちらも30%程度の値上げ率を想定しています。ただしレターパックや速達については、利用者の利便性が考慮され、大きな料金変動は起こさない方針のようです。
封書(第一種定形郵便物)とはがき(第二種郵便物)について、現時点で想定されている料金変動を表にまとめました。最終的には日本郵便からの届け出を元に決定しますが、参考にしてください。
種別 | 元価格 | 新価格 | 変動値 |
第一種定形郵便物(25g) | 84円 | 110円 | +26円(+31.0%) |
第一種定形郵便物(50g) | 94円 | 110円 | +16円(+17.0%) |
第二種郵便物(通常はがき) | 63円 | 85円 | +22円(+34.9%) |
※2024年3月時点の情報です
※参考:総務省.「郵便法施行規則の一部を改正する省令案及び民間事業者による信書の送達に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」
郵便料金値上げの背景は?
郵便料金値上げの背景には日本郵政の赤字がありますが、赤字に転じた理由は一つではありません。それぞれの要因についても以下で詳しく掘り下げます。
郵便物数の減少
近年ではインターネットの普及により、かつては郵便で送る必要のあった書類や情報を、電子メールやオンラインフォームなどでやり取りするケースが増えています。個人間の話に絞れば、コミュニケーションが電子化され、手紙やはがきの需要が減少したことも、郵便物数減少の理由として挙げられます。
日本における郵便物数は2001年をピークに年々減少しており、2022年までの21年間で約45%減少しました。テクノロジーの進歩や社会の変化に伴い、今後もさらなる減少が予想されます。
営業損益の赤字
値上げの背景には日本郵便の営業損益が赤字となったことも考えられます。郵便物数の減少の他、人口減少や高齢化による絶対数の減少や運送業務の競争が激化したことで利益確保が難しくなっていることも挙げられるでしょう。
日本郵便は営業利益を守るため、区分作業の機械化や適正な要員配置の徹底による経費削減などコストカットを行っています。しかし賃金の値上げや燃料費・物価の高騰により、2022年度の郵便事業の収支は211億円の赤字で、民営化以降初めて営業損益のマイナスを出す結果となりました。
郵便事業収支の今後の見通し
郵便事業の苦しさは日本郵政の業務体制だけでなく、物流競争の激化や少子高齢化の進行、サービス価格の高騰など外部の要因が関わっています。仮に営業料金を値上げしなかった場合2028年度には3,439億円もの赤字が見込まれますが、値上げした場合でもやはり数年後には再び赤字に転じると予測されています。
郵便はインフラを支える事業であることから、健全な運営と存続が欠かせません。値上げ後の動向についても、今後、焦点が当たると考えられます。
※参考:総務省.「郵便法施行規則の一部を改正する省令案及び民間事業者による信書の送達に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」
近年実施された郵便事業サービスの変更
実はここ数年で、日本郵便はいくつかの郵便事業サービスを段階的に変更しています。変更があった年とその内容について確認しましょう。
2021年10月以降のサービス内容変更
日本郵便では2021年10月から一部郵便物の土曜日配達を休止しています。元から日曜日・祝日は配達を取りやめていたので、これで土日祝日の郵便配送業務が休止したこととなります。
対象となる郵便物は普通扱いとする郵便物・ゆうメール・スマートレターなどです。土日祝は配送をしない他、基本的に差出日の翌々日以降に到着することとなりました。
一方で、速達や書留、ゆうパック・レターパックなどは土日祝日も変わらず配送を受け付けています。同時に2021年10月1日引受分からは速達郵便の料金が1割程度引き下げとなったため、目的地に早く届けるためにはこうした特定のサービスをうまく利用することがより重要になりました。
※参考:郵便局.「2021年10月から郵便物(手紙・はがき)・ゆうメールのサービスを一部変更しました。」
2023年の郵便料金変更
2023年10月には郵便物の特殊取扱料、荷物の付加サービス料金が一部改定されました。2021年の改定ほど広範な影響はありませんでしたが、一部の付加サービスが廃止され業務の整理が進みました。ゆうパック・ゆうメールの本人限定受取料金などは代表的な例でしょう。他にも、ゆうメールの引受時刻証明料金などが同じタイミングで廃止されました。
2023年の変更では国際郵便料金の改定も見逃せません。航空便、船便は両方とも料金値上げとなった他、国際eパケット郵便物という輸出入時の配送サービスの廃止、国際通常郵便物の地帯区別の変更、重量段階の変更などが実施されました。感染症の流行により国際間の荷物の受け渡しが変化したため、情勢に合わせた調整ともいえるでしょう。
※参照:ニッポン郵便グループ.「郵便物の特殊取扱料の改定、荷物の付加サービスの料金改定および廃止ならびに国際郵便料金の改定」
郵便料金の値上げによる請求書業務への影響
郵便料金の値上げにより、請求書業務にはコストアップ以外にもさまざまな影響があります。具体的な事例について個別に確認しましょう。
郵送コストの増大
郵便料金の値上げによる請求書業務への影響は、まず発送コストの増大が挙げられます。総務省令案のとおりに料金が変われば、定形郵便物(25グラム以下)で26円の値上げとなります。大量の郵便物を送付している企業ほど、大きな負担となるでしょう。財務上のインパクトとなり、利益率の低下につながることが懸念されます。
また郵便コストの増加は、請求書業務以外の業務にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、郵便料金の値上げに対応するために、他の業務や予算から資金を割り当てる必要があるかもしれません。これにより他の業務の予算が減り、その業務の遂行に支障を来す可能性があります。
定形郵便物(25グラム以下)における料金の変動を以下のとおり試算しました。1件1件は小さくとも、積み重なれば決して小さくない額となるでしょう。
郵送件数 | 郵便料金(改正前) | 郵便料金(改正後) | 改正後の差額 |
100通 | 8,400円 | 11,000円 | 2,600円 |
300通 | 25,200円 | 33,000円 | 7,800円 |
500通 | 42,000円 | 55,000円 | 13,000円 |
1,000通 | 84,000円 | 110,000円 | 26,000円 |
3,000通 | 252,000円 | 330,000円 | 78,000円 |
5,000通 | 420,000円 | 550,000円 | 130,000円 |
請求書業務の見直し
郵便料金の値上げによる請求書業務への影響に対処するには、業務体制を見直し、具体的な対策を練る必要があるでしょう。
例えば、送付する書類の量そのものの削減が挙げられます。特に、郵送ではなく電子データでの請求書送付に切り替える方法が有効です。送付コスト・業務コスト双方の削減が期待できます。またデジタル手段の活用により、業務の効率化やスピードアップも見込めます。柔軟な送付方法を導入することで、取引先との関係性を強化する機会も増えるでしょう。
請求書業務の電子化には取引先や社内での理解・同意が肝心です。以降の項目で詳しく解説します。
請求書業務を郵送から電子化に切り替えるには?
請求書を電子データでやり取りするにはメールやチャットツールで送る方法と帳票管理システムを利用する方法の2種類があります。それぞれの手順やメリット・デメリットを確認しましょう。
メール添付で送信する
請求書をメールやチャットツールで送る際の一般的な手順は、以下のとおりです。
・請求書をPDF形式で作成する
・メールの本文に請求書の内容を明記し、PDFを添付する
・正しい宛先に送信し、送付完了を確認する
メール添付のメリットは、郵送と比べ送信から到着までの時間が短い点です。受信側もすぐに支払処理に移れるという点で、効率的な方法といえるでしょう。また印刷費用や送料などの、金銭コストが減らせる点も魅力です。メールの返信機能を利用すれば、問い合わせやクレームの処理も並行して行えます。
しかし、メール送付にはいくつかの懸念点があります。まず、宛先の間違いには注意しなければなりません。誤送信してしまうと、意図せず重要な取引内容を外部に漏えいしてしまうことにもなりかねません。他にも、受信側がメールを見落としたことによる未払いの発生、メールサーバーの容量制限により添付ファイルが到着しないなどのトラブルも考えられるでしょう。
なお電子データで送受信した書類は、出力せずに電子データのまま保存する必要があります。
※参考:国税庁.「電子取引関係」
システム上で送信する
近年では、電子書類に特化した帳票管理システムが登場しました。システム上で書類の作成・送付・管理ができることから、電子化を進めたい企業の間で注目を集めています。利用するシステムによっては、請求書の発行から保存まで一元管理できるものもあります。電子帳簿保存法に対応していれば、「真実性の確保」や「可視性の確保」などの保存要件にも対応可能です。
注意すべき点としては、伝票管理システムの導入やカスタマイズには一定の費用や時間がかかる点が挙げられます。システムの操作に不慣れな従業員がいる場合は、操作ミスやトラブルが発生する可能性があるため、社内での指導も必要です。発生するコストを見極めて、比較した上で選ぶことをおすすめします。
請求書の送付にシステムを活用するメリット
請求書の送付に帳票管理システムを導入することで、コストカットや効率化だけでなくそこからつながるさらなるメリットも得られます。具体的な内容について以下で紹介します。
業務を効率化できる
帳票管理システムは、さまざまな分野の効率化に貢献します。細かな要素はサービスによって異なりますが、複数の顧客に対する請求書を一括管理したり、請求書の履歴や支払状況を容易に追跡できたりといった機能が搭載されているケースもあります。うまく活用すれば、請求書の作成や送付にかかる作業を大幅に効率化できるでしょう。
また業務の質を改善するという面でも、帳票管理システムは役に立ちます。例えば入力内容に不備があった場合に自動で通知してくれるシステムを採用すれば、漏れやミスといったヒューマンエラーの防止につながります。万が一送付ミスが発生した際も、書類の再発行や再送付の手続きをスムーズに進められるでしょう。
さらには、システムを導入すれば社外から請求書業務を進めることもできるので、テレワークの促進にも有効です。従来は社内でしか行えなかった請求書業務を外部で進められるので、多様な働き方を実現できるでしょう。
コストを削減できる
帳票管理システムの導入・運用にはコストがかかりますが、それでも従来の紙でのやり取りに比べると、複数の面でコストカットが見込めます。印刷や郵送コストの削減はもちろんのこと、書類管理にかかる人件費やミスによる損失は減少するでしょう。導入にかかる初期費用は、効果的な業務効率化によって早期の回収が見込めます。さらに長期的な視点で見れば、システムの維持管理コストは、印刷や郵送にかかるコストよりも低く抑えられるでしょう。
数値的なコストだけではありません。例えば請求書の控えをクラウド上に保管できることから、オフィスの省スペース化にもつながります。労働環境の改善という、なかなか目に見えにくい恩恵も受けられるでしょう。
顧客満足度の向上につながる
帳票管理システムは社内業務のみに関わるものと思われがちですが、実は、取引先の満足度にも貢献します。
請求書を郵送する場合は郵送の準備から発送、受領までに数日程度かかりますが、請求書の発行・送付をシステム上で行えば、相手側はその日のうちに書類を受領可能です。また取引先から請求書をすぐに送ってほしいといった要望があった場合、システムでの送付であれば、すぐに対応できるでしょう。
昨今はペーパーレス化を検討している企業も増えています。自社のペーパーレス化をきっかけに、取引先側でもペーパーレス化が進むかもしれません。
【企業事例:ブラザー販売株式会社様】丸4日かけていた請求書業務がたった1日で完了。誤送付リスクや精神的負担も大幅削減!
ブラザー販売株式会社様は、複合機やプリンターなどの情報通信機器を中心にグローバルな事業展開をする、ブラザーグループの販売部門を担う企業です。大企業のグループ会社として多くの請求書を扱っていましたが、従来の体制では請求書の送付に4日かかっていました。また、作業負担やコスト面だけでなく、誤送付を避けるための厳重なチェック等、担当者に毎月ふりかかる精神的負担も大きな課題となっておりました。
コクヨの電子帳票配信システム「@Tovas」を導入して電子化を進めた結果、これまで4日かかっていた請求書送付作業は1日に短縮され、誤送付リスクも大幅軽減されたことで精神的負担からも解放されました。
▼導入事例【ブラザー販売株式会社様】
丸4日かけていた請求書業務がたった1日で完了。誤送付リスクや精神的負担も大幅削減!
まとめ
物流体制の変容や取引件数の減少などから、総務省は2024年秋頃に郵便料金の値上げを検討しています。もし実際に値上げが行われた場合、書類の郵送コストがさらなる負担となると考えられます。
郵送コストを抑えるために、企業は請求書業務の見直しを迫られています。請求書を電子化することで、郵送コストの削減や業務効率化につながる可能性があるでしょう。
コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』は、請求書や納品書などの帳票書類を電子化して送付できるクラウドサービスです。電子化によって郵便料金の値上げに対応できるだけでなく、請求書の送付にかかる業務負担も見込めます。得意先の要望にあわせて郵送での発送も可能なので、すぐに電子化へ移行できなくても対応できるでしょう。請求書業務の見直しを検討している場合は、ぜひご利用ください。
@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)