ペーパーレス化の注意点!メリット・デメリットを理解し、推進する上でのリスクヘッジを
公開日:2023年7月18日 更新日:2024年6月12日
2022年1月の電子帳簿保存法改正を機に、ペーパーレス化に取り組んでいる企業も多いでしょう。しかしペーパーレス化には多くのメリットがある一方で、明確なデメリットも存在します。
今回は、ペーパーレス化のメリットやデメリット、注意点などを解説します。ペーパーレス化を進める際のリスクを抑える方法も併せて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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ペーパーレス化が進められる背景とは
ペーパーレス化が必要とされる背景としては、業務効率化や環境保全などがあります。2022年1月に電子帳簿保存法が改正されたこともあり、ペーパーレス化の動きはますます強まっていくと予想されるでしょう。ここでは、ペーパーレス化の必要性や対象となる書類、現状を解説します。
ペーパーレス化の必要性
ペーパーレス化が必要とされている理由は、印刷コストの削減や業務効率化の推進、セキュリティ対策などが可能になるからです。マクロな視点で考えれば、森林伐採の抑制やゴミの排出量抑制など、環境保全にも効果があるとされています。
業務効率化の具体例としては、ペーパーレス化によって、文書の閲覧・作成・編集が遠隔でも可能になることが挙げられます。特にクラウド型のサービスであれば、複数のパソコンやスマートフォンから、同じシステムにアクセス可能です。
昨今では働き方改革が推進されており、テレワークなど、従来とは異なる働き方を導入する動きもあります。ペーパーレス化は、働き方改革をスムーズに進めるといった観点でも、必要性が高いと言えるでしょう。
ペーパーレス化の対象となる書類
ペーパーレス化の対象となる書類は、ビジネスで活用する見積書・請求書や会議資料、パンフレット・カタログなどさまざまです。損益計算書や貸借対照表といった決算書類も含まれます。
2022年1月には、電子帳簿保存法が改正され、電子データで保存する際の要件が緩和されました。具体的には「事前承認制度の廃止」や「電子取引での電子データ保存の義務化」「検索要件の緩和」「スキャナ保存のタイムスタンプ要件緩和」などです。
法改正以降、契約書・領収書などの書類は、電子データとして簡単に作成・保存ができるようになりました。「電子帳簿保存法」や「e-文書法」といった法改正の動きを受け、ペーパーレス化がさらに進む可能性があります。
ペーパーレス化の現状
一般社団法人日本能率協会が2021年に行った調査では、「企業におけるペーパーレス化は進んでいるものの、業務内容によっては完全に電子化されていない部分もある」ことが示唆されています。
2021年の調査時点で、最も電子化が進んでいる業務は「勤怠管理」(51.8%)です。他にも、人事評価や決済業務、社内承認などで電子化が進んでいます。
一方、契約書や印鑑、FAXなどは電子化が遅れているようです。これらは取引先も電子化に対応している必要があり、社内だけで完結させることが難しいため、ペーパーレス化が遅れていると考えられます。
ただし電子帳簿保存法が改正されたことで、2023年以降、ペーパーレス化がより進んでいくことが期待できるでしょう。
参考:PRTIMES. 「2021年「ビジネスパーソン1000人調査」【ペーパーレス化の実施状況】」.(2023-06-25)
ペーパーレス化により得られるメリット
ペーパーレス化により得られるメリットは、以下の6点です。
・コストを削減できる
・オフィススペースを有効活用できる
・業務を効率化できる
・さまざまな働き方に対応できる
・環境保護につながる
・書類の紛失や情報漏えいを防げる
上記のメリットをそれぞれ詳しく解説します。
コストを削減できる
ペーパーレス化の大きなメリットが、さまざまなコストを削減できることです。例えば紙の書類を印刷する場合、印刷用紙はもちろん、プリンターやFAXなどのオフィス機器も必要になります。
オフィス機器はある程度長期での使用を想定していますが、故障や見慣れない挙動などで、業務に支障が出てしまうことも珍しくありません。
ペーパーレス化を進めることで、用紙の購入費や印刷コスト、機器に関わるさまざまなリスクを削減できます。ファイリングが不要になるため、書類を挟むファイルの購入費用を抑えられることもポイントです。
オフィススペースを有効活用できる
オフィススペースを有効活用できることも、ペーパーレス化の大きなメリットです。例えば紙で保管していた書類をデータ化すれば、保管場所を物理的に確保する必要がなくなります。
従来であればキャビネットなどで埋まっていた部分を、ミーティングスペースやリフレッシュスペースなどの用途で活用できます。観葉植物を置くだけでも、これまで書類で埋まっていた光景とは異なり、オフィス全体がフレッシュな印象になるでしょう。
業務を効率化できる
業務効率化も、ペーパーレス化に関する重要なメリットです。ペーパーレス化を実現すると、印刷・郵送・ファイリング・持ち運びなどの作業が不要になります。
さらに書類の参照性が高まるといった利点もあります。例えば紙で保管している場合、目当ての資料があれば、キャビネットやファイルから探さなければなりません。
ペーパーレス化が達成されていれば、書類の検索や閲覧もしやすくなるため、こうした作業時間を短縮できます。
さまざまな働き方に対応できる
記事の序盤でも少し触れましたが、ペーパーレス化によって、さまざまな働き方に対応しやすくなります。例えば書類をデータで管理できるようになると、遠隔からの閲覧や編集が可能になるため、テレワークの導入にも大きく役立つでしょう。
それだけでなく、出張先からの情報共有がしやすくなることも重要なポイントです。柔軟な働き方ができるようになるため、従業員満足度の向上も期待できます。
環境保護につながる
ペーパーレス化は、環境保護につながるといった側面もあります。例えば電子データの取り扱いによって紙の消費量が減るため、森林保全や二酸化炭素の排出量削減に貢献できます。
特に昨今では、企業がSDGsに取り組むなど、社会的責任が求められるようになる場面も増えてきました。ペーパーレス化は、見方を変えれば企業の社会的責任のアピールでもあり、企業価値向上のきっかけにもなる取り組みです。
書類の紛失や情報漏えいを防げる
書類の紛失や情報漏えいを防げるといったメリットも見逃せません。紙の書類は、紛失や置き忘れなどの人的ミスを引き起こす原因になります。書類を外部に持ち出すことで、情報漏えいにつながるリスクも否定できません。
ペーパーレス化を実現すれば、書類を電子データとして保存できるため、紛失などの人為的ミスは紙の書類ほど起こらなくなるでしょう。ペーパーレス化とともにセキュリティの強化にもつながるので、情報漏えいのリスクも軽減できるはずです。
ペーパーレス化を進める過程で起こるデメリット
ペーパーレス化を進める過程では、以下のようなデメリットが発生する可能性もあります。
・紙よりも見づらい
・直接メモを書き込めない
・操作に慣れるまで不便に感じる
・紙での保管と混在する
・ネットワーク環境の整備が必要になる
・ペーパーレス化を目的としたシステム導入のハードルが高い
それぞれのデメリットと対処法をそれぞれ詳しく解説します。
紙よりも見づらい
ペーパーレス化のデメリットとしてよく挙げられることが、紙よりも見づらくなってしまうことです。例えばタブレットやパソコンで閲覧する際、細かい部分は拡大して見なければならないため、紙よりも不便だと感じることがあるかもしれません。
不便を解消するためには、 デジタルデータとして閲覧することを前提に書類や資料を作成することが大切です。レイアウトや構成などを工夫することで、タブレットやパソコンでも見やすくなる可能性があります。
直接メモを書き込めない
直接メモを書き込めないことも、ペーパーレス化のデメリットです。紙の書類であれば、何か補足情報を書き込みたいときに、メモとして直接記載できます。一方、電子データの場合は、使用するツールによってはメモが打ち込みにくいかもしれません。
ただし、タッチパネルが搭載された端末であれば、タッチペンや指を使って画面上にメモをすることが可能です。マーカーや削除もできるため、使い方次第では紙よりも利便性が高くなります。
操作に慣れるまで不便に感じる
操作に慣れるまで不便に感じる点にも注意しましょう。ペーパーレス化のためには、タブレットやスマートフォンの機器を用意するなど、企業全体でのIT化が欠かせません。新しい技術を取り入れていない企業であれば、環境が大きく変わることになります。
そのため、IT機器の使用に慣れていない社員に対しては、研修や説明会を行うことが大切です。最初は不便に感じても、慣れてくれば作業効率が徐々に高まっていくでしょう。
紙での保管と混在する
紙での保管と混在することも、ペーパーレス化のデメリットです。前述の調査からも明らかなように、すべての書類を電子化できるとは限りません。実際、売買契約や賃借契約などの際に使用する重要事項説明書のように、紙での保管が法律によって義務付けられている書類も存在します。
ただし、現在紙でやり取りしている書類も、将来的に電子化されていく可能性が高いでしょう。法律の改正によって電子データの保存要件も緩和されてきたため、今後は電子データでの保管が主流になる可能性があります。
ネットワーク環境の整備が必要になる
ネットワーク環境の整備が必要になることも、ペーパーレス化の際に注意したい点です。電子データをオンラインでやり取りするには、安定したネットワーク環境が必要になります。
ペーパーレス化に向けて、ネットワーク環境を見直すことが大切です。また、セキュリティの強化も欠かせません。重要な情報を扱う際は、パスワードの設定やアクセス制限によって情報漏えいのリスクを軽減しましょう。
ペーパーレス化を目的としたシステム導入のハードルが高い
ペーパーレス化を目的としたシステム導入のハードルが高い、といったデメリットも見逃せません。数多くのシステムから適切なものを選ぶには手間がかかってしまいますし、そもそも効果が想定できず、導入に踏み切れない場合もあるでしょう。
システムの導入経験が浅い場合は、スモールスタートで始められるサービスを選ぶことがおすすめです。コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』は最短5日からスモールスタートで始められるため、まずは試してみたいというような場合でも活用しやすいシステムとなっています。
ペーパーレス化を進める際の注意点
ペーパーレス化を進める際の注意点は、以下の3点です。
・システム障害への対策をする
・社員の理解を得る
・特定の部署や業務から始める
上記の注意点を詳しく解説します。
システム障害への対策をする
まず注意したいことは、システム障害への対策をすることです。ペーパーレス化をした後、システム障害が起きてしまうと、データを閲覧できなくなるなど業務に支障が出てしまいます。
システム障害時の対策をするために必要なことは、データのバックアップをとっておくといった取り組みです。バックアップがあると、システム障害をはじめとした非常事態が発生しても、すぐに復旧できます。
上記に加えて、パソコンやタブレットなどが故障した場合の対応方法も検討する必要があります。具体的には、予備のデバイスを常時用意しておくことが一般的な方法です。
ハードウェアやソフトウェア、人為的ミスなど、システム障害の原因はさまざまです。なるべく多くのシチュエーションを想定し、対策を組んでおきましょう。
社員の理解を得る
ペーパーレス化をするにあたって、社員の理解を得ることも重要です。特にITに不慣れな社員が多いような場合は、事前研修や試験的な導入も必要になります。その際は、ペーパーレス化を進める場合の課題を把握することをなるべく優先しましょう。
ペーパーレス化をする時は、必要に応じて社員の意見を取り入れることも重要です。ペーパーレス化に限った話ではありませんが、何らかのシステムを大きく変える際は、業務を担当する社員がその負担を引き受けることになります。
マネジメント層や現場に関係のない人たちだけでペーパーレス化を進めてしまうと、非効率的な組織改革になってしまうだけでなく、現場の社員の反感を買ってしまう可能性もあるので注意しましょう。
特定の部署や業務から始める
特定の部署や業務から始めてみることも重要です。前述のように、ペーパーレス化を進める過程では、さまざまなデメリットが生じます。一度に大きく変えてしまうのではなく、段階的な導入を意識しましょう。
例えば本記事でも紹介したように、勤怠管理はペーパーレス化が大きく進んでいる分野です。他社の事例も参考にしつつ、始めやすい部分からペーパーレス化を実施してみることがよいでしょう。
企業にある書類の中には、紙での保存が義務付けられているものなど、ペーパーレス化が難しいこともあります。社内にある書類をカテゴリ分けしつつ、対応可能なものをピックアップし、優先順位を付けてからペーパーレス化することがおすすめです。
ペーパーレス化を進める際の流れ
ペーパーレス化を進める際は、まず目的を明確化し、対象となる書類・業務を決定します。その後、業務フロー・ルールの策定、必要なツールの導入などが必要です。ここでは、ペーパーレス化の流れを簡単に解説します。
目的を明確にする
まずは業務効率化やコスト削減など、目的を明確にしましょう。そのためには業務上の課題をよく把握し、内容に沿った具体的な目標を設定する必要があります。具体例は、以下のとおりです。
・請求書のやりとりに時間がかかるといった課題を解決するため、ペーパーレス化することで、印刷や郵送の手間を削減する
・テレワーク時の制限が多いといった課題を解決するため、ペーパーレス化を通して、テレワーク時でもデータのやりとりができるようにする
対象となる書類や業務を決める
目的が明確になったら、ペーパーレス化の対象とする書類や業務を決めましょう。比較的導入しやすく、目的を達成しやすいところを優先します。人事関係の書類や会議資料、稟議書(りんぎしょ)といった、社内だけで完結しやすい書類などがおすすめです。
一方で契約書などの書類は、相手が同じようにペーパーレス化を進めていることが前提になるため、導入のハードルはやや高めとなります。このあたりの事情は、業界によっても大きく異なるため、ケースバイケースで考えましょう。
業務フローやルールを策定する
ペーパーレス化により業務フローが変わるため、運用開始の前に、業務フローやルールを決めておきましょう。あらかじめ業務フロー・ルールを決めておくことで、ペーパーレス化特有のデメリットを回避できる可能性があります。
例えば紙と電子データの両方を扱う場合、ルールがしっかりと決められていないと、電子データとして扱うべきものを紙として扱ってしまうといったトラブルが起こりがちです。細かい部分まで決めておくことで、ペーパーレス化を実現した後の混乱も発生しにくくなります。
必要なツールを導入する
業務フロー・ルールの策定までが終わったら、ペーパーレス化の目的に合ったツールを導入します。例えばテレワーク時のデータのやりとりを行うのであれば、タブレットやスマートフォンなどを用意することが望ましいでしょう。
勤怠管理システム・文書管理システムなど、利便性を向上させるツールもおすすめです。機能性や操作性を比較しつつ、使いやすさを優先して選ぶとよいでしょう。
ペーパーレス化のリスクを抑えるには?
ペーパーレス化の際に気をつけたいことが、情報漏えいのリスクです。これを抑えるためには、アクセス権限の制限と保管期限の管理の主に2つの取り組みが必要になります。ここでは、それぞれの方法を詳しく解説します。
アクセス権限の制限
情報漏えいを防止するには、データにアクセスできる人の権限を制限することが大切です。昨今ではクラウド型のシステムも増えており、さまざまな人がデータにアクセスできるようになっています。必要に応じて、閲覧・編集・作成・削除などの権限を設定しましょう。
特に、機密性の高い文書へのアクセス権限は、厳しめに設定する必要があります。ただしアクセス権限を制限しすぎてしまうと、業務の進行に悪影響が出てしまう可能性があるため注意が必要です。
保管期限の管理
情報漏えいのリスクを抑えるためには、保管期限の管理も重要です。データで文書の管理をすると、保管期限が過ぎていても、削除を忘れてしまうことがあります。
保存しておく必要がない書類は、期限を設定した上で削除するようにしましょう。データの総量が少なくなるため、目当ての書類を参照しやすくなる他、情報漏えいのリスクを抑えることにもつながります。
保管期限の管理は、手動でも実施できますが、文書管理システムを活用するとよりスムーズです。
まとめ
ペーパーレス化を進めることで、利便性の向上や業務効率化が期待できます。しかし多くのメリットがある一方で、社員によっては紙の書類よりも扱いにくい、ツールの操作に慣れるまで時間がかかるといったデメリットもあります。
ペーパーレス化を進める際は、目的を明確にしつつ、段階的に導入することがおすすめです。コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』は、帳票書類を電子化してWeb上で送信できるため、経理業務のペーパーレス化に役立ちます。
セキュアな環境で書類の送付・保存ができ、取引先の要望に合わせて、郵送やFAXでも送付が可能ですので、万が一取引先が紙での対応を希望しても、その希望を叶えつつ、送る側はペーパーレス化を実現できます。また、送付した書類は、電子帳簿保存法に対応した形で管理できるなど、ペーパーレス化特有のデメリットを回避しやすくなっています。
最短5日で導入でき、スモールスタートで始められるため、ペーパーレス化を検討している場合はぜひお試しください。
@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)