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決算修正の修正手順や注意点とは?前期損益修正益(損)が毎年出るリスク

決算修正の修正手順や注意点とは?前期損益修正益(損)が毎年出るリスク

公開日:2023年5月16日 更新日:2024年3月15日

決算書を作成する際、過去の決算に誤りが見つかることがあります。決算書の間違いに気がついたら、当然、修正の手続きが必要です。しかし、どのように修正すればいいのか、修正により発生するリスクはあるのか、といった疑問を抱えている担当者の方も多いでしょう。

今回は決算修正の手順や注意点などを解説します。過去の決算書に誤りがあり、どのように修正したらいいのかわからない場合は、ぜひ参考にしてください。

決算までの流れ

企業は事業年度ごとに決算書を作成し、会社の財務状態や経営状況などを報告しなければなりません。決算手続きの流れは以下のとおりです。

・事業年度内の記帳を完了させる
・資産や負債の確認を行う
・決算整理仕訳を行う
・決算書を作成する
・承認を受ける
・決算書を元に税務申告を行う

書類の承認を受ける機関は会社法によって定められています。例えば株式会社の場合は、原則として定時株主総会による承認が必要です。

税務申告の期限は決算日の翌日から2カ月以内です。法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人税、消費税の確定申告書を実施します。3月決算の会社の経理部門が、4月から繁忙期を迎えるのはこのためです。

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決算内容に誤りがあった場合の対処法

3月決算の会社であれば4月以降に税務申告のための準備を行いますが、この時点で決算内容に間違いが認められるケースもあります。決算内容に誤りがあった場合は修正が必要です。ここでは決算修正による処理を解説します。

決算修正とは

決算修正とは、すでに確定した前期分の決算内容に誤りがあった際に、当期分として修正することです。従来、決算内容の修正は「前期損益修正益」「前期損益修正損」の勘定科目で処理されていました。

しかし2009年に公表された「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」により、当期分としての修正は例外的な方法として扱われるようになりました。現在は当期分として処理するのではなく、遡って修正処理をすることが原則です。

ただしこれは、大企業に対して強制力を持っている基準であり、中小企業には影響しません。そのため中小企業では現在でも「前期損益修正益(損)」の勘定科目による修正が可能です。

出典:企業会計基準委員会「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」

前期損益修正益(損)とは

前期損益修正益(損)とは、前期以前の決算内容に間違いがあった場合に、当期分で修正する際に用いられる勘定科目です。前期以前の決算内容に誤りがあった場合、何かしらの方法で帳尻を合わせなければなりません。

例えば、本来は500,000円の売上高だったが実際には700,000円だった、つまり決算書の売上高が間違っていたケースを想定してみましょう。この場合、当期において売上高を200,000円追加すれば帳尻を合わせられます。

ただし前期損益修正益(損)は、本来は前期以前に計上されている損益なので、当期の損益とは明確に区別する必要があります。決算書に記載する際は、特別損益の部に計上することが原則です。

決算修正の注意点

前述のように、現行の会計基準では「前期修正損益(損)」による決算修正は、基本的に認められていません。つまり当期分として訂正するのではなく、修正再表示をして、前期以前に遡って処理をする必要があります。

修正再表示をする際は、当期の決算書作成時に、過年度の決算書における誤りを訂正したこととして正しい金額を反映させます。ただし修正再表示は、金額的に重要性が低いと認められる場合には適用されません。

また上記の「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」は、前述のように、会計監査人の監査を受ける大企業に適用されるものです。中小企業やスタートアップなどに対して強制力を持っているわけでないため、その点でも注意が必要です。

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決算書の修正が必要になる主なケースとは

決算書の修正が必要になる主なケースは、「売上の計上漏れ」「費用の計上漏れ」「棚卸資産の計上漏れ」の3つです。上記3つのケースを、それぞれ詳しく解説します。

売上の計上漏れ

よく見られるケースは売上の計上漏れです。例えば、売上の発生時期と入金時期にずれがあり、決算の直前に行われた取引の売上が翌期に計上されているケースです。

決算を終えるまでに入金に気付けば、すぐに帳簿に反映させることで、計上漏れを防げます。しかし入金に気付かないまま帳簿を締めてしまい、後で計上漏れが発覚するような場合もあるでしょう。

売上がしっかりと計上されているかどうかは、支払うべき税額にも大きく影響するため、税務調査でもチェックされやすい項目の一つです。

費用の計上漏れ

前払費用を全額計上してしまい、修正が必要になるミスもよくみられます。例えば家賃を2年分前払いし、本来は当期分のみ計上しなければならないところ、2年分を計上してしまったといったケースです。

享受しているサービスのうち、提供されていない分は当期の費用として計上できません。つまり当期の会計処理では、当期に受けるサービスの分の費用を計上することが原則です。これは会計処理の基本的な概念で、費用収益対応の原則と呼ばれます。

上記のケースでは、2年分のうち1年分は翌期分の費用になるため、修正処理をする必要があります。

棚卸資産の計上漏れ

棚卸資産の計上漏れとは、帳簿に記載された期末棚卸資産が実際よりも少なく計上されていることです。期末棚卸資産が少なく計上されていると、課税所得が少なくなるため、税務調査でも指摘されやすいポイントです。

「棚卸資産=商品」のイメージも強いですが、製造途中の製品や原材料、事務用品などもその一部です。棚卸資産の計上をする際は上記のものも含めて、漏れがないように処理する必要があります。

決算修正を行う際の手順

決算修正を行う場合、まず損益計算書に影響するかどうかを確認します。その後、修正申告または更正の請求の手続きをするといった流れです。ここでは、決算修正を行う場合の手順を詳しく解説します。

損益計算書に影響するかを確認する

まずは決算修正により過去の損益計算書にも影響するかどうかを確認します。損益計算書に影響するかどうかで、処理の方法が変わってくるためです。影響しない場合と影響する場合に分けて、処理方法を解説します。

損益計算書に影響しない場合

過去の損益計算書に影響しないのは、「勘定科目の名称の誤りを修正した」「長期と短期の分類を間違えていたため修正した」などのケースです。例えば勘定科目の名称を修正する場合、計上された金額が変わるわけではありません。

長期と短期の分類も同様であり、名目上の修正が行われるだけで、いずれも損益計算書には影響しません。このような場合は、該当する箇所を変更するだけであり、前述のような修正再表示は必要ありません。

損益計算書に影響する場合

売上高や費用の計上漏れ、未払金などがあった場合は、当然ながら損益計算書に影響します。前年度の売上高や売上原価が増えるため、利益剰余金の金額を修正しなければなりません。

現行の会計基準では、大企業と中小企業で処理方法が異なります。

大企業 当期首残高で利益剰余金を修正する
中小企業 当期首残高で利益剰余金を修正する、もしくは「前期損益修正益(損)」を使って当期分の損益計算書を修正する

繰り返しになりますが、中小企業のみ、従来からの方法である「前期損益修正益(損)」を使って当期分として処理できる点に注意が必要です。

前期分の誤りを修正できたら、次に修正申告または更正の請求の手続きを進めていきます。

修正申告または更正の請求の手続きをする

決算修正の処理を行うと修正した年度の納税額が変わるため、修正申告または更正の請求の手続きが必要です。修正申告とは納税額が少なかった場合に行う手続きであり、修正申告書を作成して税務署へ提出します。

一方、納税額が多すぎた場合は更正の請求が必要です。更正請求書を作成し、税務署に提出して手続きを進めていきます。ちなみに更正の請求が認められるためには、確定申告の提出期限から5年以内に手続きをしなければなりません。

ただし請求期間が過ぎてしまったとしても、例外的に更正請求が認められる場合もあります。ケースバイケースなので、詳しくは国税庁のホームページを確認するか、税理士などの専門家に相談してみることがおすすめです。

前期損益修正益で処理する際の仕訳方法

前期以前の決算において収益の修正が発生した場合、「前期損益修正益」を用いて仕訳をします。ここでは売上高の修正、費用の修正、棚卸高の修正の3つのケースに分けて詳しい仕訳方法を解説します。

売上高の修正

売上高の一部に計上漏れがあり、売上高を追加で計上する場合の仕訳例を紹介します。

・事業年度末に納品済みとなっていた商品の一部が翌期に入金となったため、売上高に計上し忘れていた
・前期の決算時における売上高30,000円に対し、実際には40,000円が正しい金額であった

上記のようなケースでは前期の仕訳処理は以下のようになります。

【前期の仕訳】

借方 貸方
売掛金 30,000 売上高 30,000

次に、決算時の売上高と実際の売上高の差である10,000円を追加します。当期の仕訳処理は以下のとおりです。

【当期の仕訳】

借方 貸方
売掛金 10,000 前期損益修正益 10,000

当期の売上高ではないものを処理するため、「前期損益修正益」を使います。これで売上高の修正は完了です。

費用の修正

費用の一部を多く計上しており、費用を修正する場合の仕訳例を紹介します。

・事業年度末に翌事業年度分の地代を前払した際に、前期分として費用を計上してしまった
・前期の決算時における地代家賃30,000円を翌期分に修正する

この場合の前期の仕訳処理は以下のようになります。

【前期の仕訳】

借方 貸方
売掛金 10,000 前期損益修正益 10,000

当期の売上高ではないものを処理するため、「前期損益修正益」を使います。これで売上高の修正は完了です。

費用の修正

費用の一部を多く計上しており、費用を修正する場合の仕訳例を紹介します。

・事業年度末に翌事業年度分の地代を前払した際に、前期分として費用を計上してしまった
・前期の決算時における地代家賃30,000円を翌期分に修正する

この場合の前期の仕訳処理は以下のようになります。

【前期の仕訳】

借方 貸方
地代家賃 30,000 現金 30,000

費用収益対応の原則により、家賃を前期に前払いしたとしても、サービスを受ける時期(当期)に合わせて会計処理をします。当期の仕訳は以下のとおりです。

【当期の仕訳】

借方 貸方
前払地代家賃 30,000 前期損益修正益 30,000

上記の仕訳によって、誤って前期分として費用を計上してしまった際の処理は完了です。

棚卸高の修正

棚卸高を実際よりも少なく計上していたため、棚卸高を修正する場合の仕訳例を紹介します。

・事業年度末に数えた際の棚卸商品の個数に誤りがあったため、前期の期末商品棚卸高100,000円を120,000円に修正する

この場合は、前期の仕訳処理は以下のようになります。

【前期の仕訳】

借方 貸方
商品 100,000 期末商品棚卸高 100,000

前期の期末商品棚卸高は100,000円ですが、実際には120,000円なので、差額である20,000円を追加します。当期の仕訳は以下のとおりです。

【当期の仕訳】

借方 貸方
商品 20,000 前期損益修正益 20,000

売上高や費用だけでなく、棚卸高も損益計算書に影響を及ぼします。差額は必ず前期損益修正益として処理しなければなりません。

前期損益修正損で処理する際の仕訳方法

前期の決算で発生した経費や損失の誤りを修正する場合は、「前期損益修正損」を用いた仕訳を行います。ここでは仕入高の修正、費用の修正、棚卸高の修正の3つのケースに分けて詳しい仕訳方法を解説します。

仕入高の修正

仕入高を実際よりも少なく計上していたため、修正する場合の仕訳例を紹介します。

・前期に購入した原料の請求金額に誤りがあり、前期の仕入高150,000円を180,000円に修正する

この場合は前期の仕訳処理は以下のようになります。

【前期の仕訳】

借方 貸方
仕入高 150,000 買掛金 150,000

実際の仕入高は180,000円なので、差額である30,000円を追加します。当期の仕訳は以下のとおりです。

【当期の仕訳】

借方 貸方
前期損益修正損 30,000 買掛金 30,000

売上高を追加する場合とは異なり、前期損益修正益ではなく、前期損益修正損の勘定科目を使用する点に注意が必要です。

費用の修正

費用を実際よりも少なく計上していたため、修正する場合の仕訳例を紹介します。

・前期に出張をした社員が出張費の精算をし忘れており、自身で立て替えた旅費交通費50,000円を精算するために仕訳処理を行う

前期の段階では社員が立替払いしていただけなので、会計処理はありません。当期では立て替えてもらっていた旅費交通費を清算するため、「前期損益修正損」の勘定科目を使った仕訳が必要です。当期の仕訳は以下のようになります。

【当期の仕訳】

借方 貸方
前期損益修正損 50,000 現金 50,000

棚卸高の修正

棚卸高を実際よりも多く計上していたため、棚卸高を修正する場合の仕訳例を紹介します。

・事業年度末に数えた際の棚卸商品の個数に誤りがあったため、前期の期末商品棚卸高150,000円を100,000円に修正する

この場合は、前期の仕訳処理は以下のようになります。

【前期の仕訳】

借方 貸方
商品 150,000 期末商品棚卸高 150,000

実際の末商品棚卸高は100,000円なので、差額である50,000円分を「前期損益修正損」として処理する必要があります。当期の仕訳は以下のとおりです。

【当期の仕訳】

借方 貸方
前期損益修正損 50,000 商品 50,000

簡潔にまとめると、前期の仕訳よりも実際の資産額が大きくなる場合は「前期損益修正益」、そうでないなら「前期損益修正損」を使います。

前期損益修正益(損)が毎年出るリスク

前期損益修正益(損)を毎年出していると、税務調査やペナルティなどのリスクが想定されます。ここでは、気を付けておきたいリスクを2つのトピックに分けて詳しく解説します。

税務調査の対象になりやすい

まず注意しておきたいリスクは、税務調査の対象になりやすいことです。修正の頻度が少なければそこまで問題はありませんが、前期損益修正益(損)が毎年のように発生すると、適切な経理を行っていないとみなされる可能性があります。

税務署に目を付けられてしまうと、税務調査の対象になりやすいため注意しましょう。税務調査とは、申告した内容が正しいかどうかを、税務署の担当者がチェックすることです。調査結果によっては修正申告を求められたり、指導を受けたりするケースもあります。

決算書はミスのないように作成し、前期損益修正益(損)をなるべく使わないようにすることが大切です。ミスが発生しやすいポイントを記録し再発防止に努めましょう。

ペナルティが課されるリスクがある

税務調査に加えて、ペナルティが課されるリスクがある点にも注意が必要です。例えば修正申告により納税額が増えた場合、その分は法定期限までに納税していないものとして扱われるため延滞税が発生します。

さらに税務調査によって修正申告を求められた場合は、延滞税以外にも過少申告加算税が課されます。毎年のように決算修正が出ていると、申告内容を仮装または隠ぺいしたとみなされ、重加算税が課せられるリスクもあります。

ただし税務署から指摘される前に、こちらから修正申告をすれば、過少申告加算税や重加算税は適用されません。会計上の誤りが判明した場合は、なるべく早期の段階で申告することを心がけましょう。

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まとめ

決算修正は、決算内容に誤りがあった場合に行う処理のことです。修正金額が小さい場合や中小企業などでは、「前期損益修正益(損)」の勘定科目を使って、当期分として処理することがあります。対して大企業では、2009年に公表された会計基準により、前期以前に遡って修正処理をすることが原則です。

決算修正が毎年のように発生すると、修正処理に手間や時間がかかる上、税務調査の対象にもなりやすいです。決算修正をなくすためには、経理業務を効率化し、決算業務に注力する必要があります。

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@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)

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