経理ミスの防止策とは?よくある事例や原因と業務改善方法の解説
公開日:2023年3月14日 更新日:2023年10月19日
経理部門は会社のお金の流れを管理する部署であることから、経理ミスの削減は信用問題にも関わる重要な課題です。しかし経理部門全体でミスの削減に取り組みつつも、なかなか成果を上げられない担当者も多いのではないでしょうか。
今回は経理ミスの具体的な事例や発生原因を踏まえ、ミスを減らすための防止策について解説します。ミスは完全には避けがたいですが、対策を行えば発生する頻度を下げたり見つけられる確率を上げたりできます。経理部門を盤石にしたい方はぜひ参考にしてください。
経理ミスのよくある事例とは
経理ミスは大きく分けて人的ミスと制度的なミスに分けられます。前者はいわゆる単純ミスで、入力システムの導入やダブルチェック体制である程度防げます。後者は制度の変化を把握し、法律に則った適切な対応が必要です。具体的な事例を以下で確認します。
数字の入力ミス
経理で非常によく見られるミスが数字の入力ミスです。桁を一つ多く打ち間違える、誤った記入欄に書き込んでしまうなど、具体例を挙げればきりがありません。経理部門は普段から数字を扱う仕事であり、担当者も数字の扱いには日頃から特に気を付けています。しかしこうした単純ミスは人が行う以上、完全に防ぐことは難しいでしょう。
入力ミスを誘発する要因として、記入件数の多さが考えられます。手打ちで数字を入力することが多いと、それだけミスが起きる隙が増えるとも言えます。特に請求書の作成などで金額に不備があると先方に迷惑をかける可能性があり、訂正をするのに多大な手間と時間を要することもあるため注意が必要です。
二重計上
二重計上とは同じ項目を2回計算してしまい、実体と数値に差ができてしまうことです。クレジットカードで経費を支払った状況で考えてみましょう。本来であればクレジットカードの明細書か領収書のどちらかで経費を精算すればよいですが、2枚とも経費として計上してしまうと実際の2倍の経費がかかったことになります。
経費の二重計上を繰り返すと、虚偽申告として脱税の疑いをかけられる可能性があります。また売上を二重計上すると税金を多く払わなければならなくなり、会社に損失を与えることになりかねません。
在庫の計上漏れ
計上ミスは経費や売上だけでなく在庫を計上する際にも起こり得ます。在庫は会社の資産として考えられるため、記録している数に不備があると最悪の場合、資産をごまかしていると受け取られるケースもあるでしょう。
在庫の計上漏れは、単純な数え間違い以外にも計上範囲の誤認によっても起こります。経理上の在庫とは倉庫にある品だけでなく仕入先や販売先など社外に置いてあるものも含みます。在庫の総量と所在位置を常に正確に把握しましょう。
請求書の送付ミス
請求書を間違った場所に送ってしまう、請求書の送付をそもそも忘れていたなどの送付ミスも重大な過失です。郵送やメールで請求書を送っている場合に特に発生しやすいミスでしょう。
また正しい場所に期日どおりに請求書を送ったとしても、金額が間違えていると今度は過入金や過小請求にもつながります。請求書は会社のお金に関わる大事な書類なので、送付ミスは内容の大小に関わらず会社の信用を損ねかねない危険なミスです。送付ミスを防止するには、送付前のチェック体制を強化する必要があります。
書類の紛失
経理の書類紛失が起きる理由はいくつか考えられます。例えば担当者間理の間で領収書をうまく伝達できず、結果として紛失してしまうケースもあるでしょう。また、きちんと渡せたとしても似たような書類にまぎれてしまう可能性もあります。
請求書や領収書といった経理が扱う書類は、決裁時の提出や一定年数の保管義務などが課せられています。紛失した場合は関係者にすみやかに連絡し、再発行を依頼しましょう。自分一人では完結できず他人の手をわずらわせてしまうため、特に意識して減らしたいミスです。
また、発行する側も書類の送付履歴を残しておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれるかもしれません。書類を間違いなく送付したにもかかわらず、先方から届いていないという連絡が入ることもよくあるケースです。
法改正への対応遅れ
近年、インボイス制度や電子帳簿保存法など経理を取り巻く法制度が著しく変化しています。制度の変化を知らずに今までと同じやり方を貫いた結果、国から不備とみなされる可能性があるので注意しましょう。例えば証憑書類の保存方法に誤りがあった場合、請求があってから数年後に指摘されると修正に余計な時間とコストがかかってしまいます。
制度の改正に対して国もある程度の移行期間は設けていますが、早めに対応できた方が今後の業務をスムーズに進められます。改正内容を正確に把握し、ミスが起きないうちに順次移行を進めましょう。
経理ミスによる影響
経理におけるミスは部門内だけでなく、会社全体にも影響を及ぼします。例えば数字の入力不備であれば、エラーが起きている箇所の特定には時間がかかります。経理が一丸となって発見・修正にあたることから、ミスの修正にかかるコストは決して小さいものではありません。しかしミスを見逃してしまえば、結果として税金の過払いや請求漏れにともなう資金繰り悪化の遠因になるでしょう。
経理が扱う領収書や請求書といった書類は取引先にも関係します。もしこうした証憑書類に不備があった場合、先方に再発行してもらわなければなりません。重大なミスが頻発すれば会社の信用問題にも発展します。
上記の理由から、経理ミスはそもそも発生件数を可能な限り抑えることが大事です。ミスをしない体制作りに力を入れましょう。
経理ミスが発生する主な原因
経理ミスはさまざまな要因によって発生します。ミスを効果的に防止するためにも、まずは経理ミスが発生するよくある原因について理解を深めましょう。
集中力の低下
長時間の単純作業は集中力を下げ、結果として単純ミスにつながる可能性があります。同じ姿勢や同じ作業を続けていると、一つの物事に意識を向けることが難しくなりがちです。集中力が落ちた状態では目の前の情報が何を表しているかとっさに判断できなくなったり、平常時では発見できたミスを見落としたりするようになります。
特に経理は同じ姿勢を取り続けるデスクワークであり、扱う内容も数字が多いことから目新しさを感じにくい業務です。さらに集中して業務にあたっていても電話や他の社員からの質問によって中断することも少なくありません。集中力が求められるにもかかわらず維持が難しい部門とも言えるでしょう。
業務量の多さ
経理は決算期が近づくと業務量が大幅に増加します。業務量が多いからといってミスに直結するわけではありません。しかし自分のキャパシティを超えた業務はストレスになり、結果的に集中を阻害する原因になります。
さらに似たような作業を並行して進めていると、内容の混同や一部のやり忘れが起きるおそれもあります。オーバーワークはさまざまなデメリットの要因となる状態です。なるべく避けた方が望ましいでしょう。
情報共有の不足
規模が大きな会社では一つの業務を複数人で担当することや、別の人が担当していた業務を引き継ぐこともあるでしょう。このとき、情報に行き違いや誤りがあるとミスに直結します。作業途中で入力ルールに変更があった場合や、注文がキャンセルになった場合などは関係する経理にすみやかに共有しなければなりません。
また業務を一人で担当していた者が退社したり休職したりした場合、十分な引き継ぎがなければ業務を進めることが難しくなります。特定の業務を一人の担当者に頼りすぎないようにするため、属人化の防止を意識することが重要です。
知識不足
経理の仕事には、税務申告や決算書類の作成など知識がなければできない専門業務が欠かせません。反面、経理部門は他の部門に対して人数が少ないケースも多く、人員不足で新人教育が行き届かないこともあります。上記のような要因から知識が不十分な経理が業務にあたり、結果的にミスしてしまう事例も少なくありません。
知識不足によるミスの具体例としては、消費税の課税区分が区別できず10%と8%を混同しているケース、源泉徴収が必要な支払いに対応していないケースなどです。また一方で、ミスを防ぐため知識がある人に任せきりにしてしまうと、今度は属人化が進んで若手に知識を継承できなくなるという問題が発生します。
経理ミスが発生したときの対処法
ミスを起こしたときこそ、すみやかな対応が肝心です。以下ではミスが起きた際の対処法を流れに沿って紹介します。なお会社によってはあらかじめルールが決まっている場合もあるので、もし既存の仕組みがあればそちらに従いましょう。
上司に報告する
まずはミスに気付いた旨を上司に報告しましょう。ミスの内容を詳しく明確に伝えるため、以下の点に留意します。
・どのくらい:ミスの重要度、対応の緊急性
・いつ:ミスの発生時点
・どこで:ミスが発生した業務内容
・だれが:関係者の有無
・どうした:ミスの具体的な内容
上記の報告を元に、解決策や関係先への連絡などを検討しましょう。客観的な視点が入ることで修正そのものにかかる時間も減らせる可能性があります。
ミスを修正する
上司への報告と前後してミスを修正しましょう。報告前に修正した場合は修正前の内容をスクリーンショットで保存し、証拠として残しておくことも有効です。報告後に修正する場合は、まず報告を優先したことと修正の方向性について一言添えると上司も納得しやすくなります。
再修正は初回の入力より念入りにチェックしましょう。ここでさらに間違えてしまうと手間が増えるだけでなく関係者からの心証が大きく悪化してしまいます。まずは一度深呼吸をし、冷静な対処を心がけましょう。
周囲のサポートを受ける
正確な修正を行うためにも周囲の力を借りましょう。再修正に自信がない場合は、他の担当者とのダブルチェックが有効です。あわせて、ミスを起こさないためにその人がどのような工夫をしているか尋ねてもよいでしょう。
知識が足らずに不備を起こしてしまった場合は、対処できる人に修正を依頼します。同時に、知らなかった内容をその場で覚えると次回以降同じ内容にも対応できるでしょう。忙しそうだからと一人で背負い込むのではなく、適切に助力を求めることで結果的にミスを減らせるはずです。
原因を把握する
修正処理が一段落した時点で、今回のミスを自分なりに分析しましょう。ノートにミスの内容をメモし、自分がミスをしやすい業務内容について検討することも有効です。例えば数字の入力ミスが続くようであれば、休みを利用して一度リフレッシュしたり、集中力が切れる前にこまめな休息を入れたりする方法もあります。
また伝達ミスなど個人では対処できないミスが頻発する場合は経理部門全体に問題があるのかもしれません。忙しくない時期に意見交換会を設けるなど、チーム全体でミスの防止に当たりましょう。
経理ミスの防止策
経理ミスの防止策には個人でできることと、チームでできることの2種類があります。具体的な防止策を確認し、自分の会社や業務に導入できないか検討しましょう。
ミスが発生しやすい作業を把握する
ミスには必ず原因があります。ミスが起きた状況を視覚化することで自分の傾向や発生しやすい作業を把握しましょう。原因を特定できれば対策も立てやすくなります。
対処法は具体的であればあるほど有効です。数字を読み違えるミスが多い場合は入力前に一度心の中で音読をする、知識が足りずにミスを起こしてしまう場合は意識的に知識を蓄えるなどルールを設定しましょう。ミスを防止するための対策をルール化することで、単純ミスの軽減につながります。
オフィスの整理整頓を心掛ける
きれいに整頓されたオフィスデスクは2つの面からミスの防止に役立ちます。まず紙が散乱していると領収書や請求書がすぐにまぎれてしまいます。机の上に紙がなければ、計上忘れや書類の紛失を根本から防げるでしょう。
さらに整理されたデスクは集中力の維持にも効果的です。目の端に余計なものがあると人間はどうしてもそちらに意識が向き、結果的に集中を保ちにくくなってしまいます。反面、きれいな机なら今集中したい内容にだけ注意を向けられるので、ミスをしにくくなるでしょう。
集中しやすい環境で作業をする
デスクを整理しても、そもそも机にずっと座っているだけで集中は損なわれていきます。そこで、思い切って作業環境を変えることもおすすめです。例えば集中力が必要とされる業務を行うときは、会議室など音の少ない場所で作業をすることなどが考えられます。
注意点としては、経理の書類は他部門と違って持ち運びが許可されていないケースもあります。もし別の場所で作業したい場合は事前に上司に確認を取りましょう。オンラインでの帳票管理システムを導入していれば電子データで管理ができるので、紙の書類で処理をするよりも気軽に作業環境を変えられます。
経理ミスの発生を抑える業務改善方法
人の手が入っている以上、経理ミスを完全になくすことはできません。しかし工夫次第で起きる確率を減らしたり起きたミスを見つけやすくしたりできます。ここでは業務の改善方法を以下でチェックしましょう。
マニュアルやルールの整備
知識不足や単純な確認漏れによるミスを防ぐにはマニュアルやルールの整備が有効です。マニュアルがあれば知識が不十分な新人であっても自力で進められるでしょう。さらに知識を共有することで属人化も防げるので、経理部門全体にとっても良い効果が得られます。
すべての業務をマニュアル化すると量が膨大になり逆に索引性が低下してしまうので、まずはミスが起きやすいポイントに絞って作成することをおすすめします。またすでにマニュアルやルールがあったとしても、実際の業務とズレがある場合はうまく働きません。定期的に内容を見直し、慣れない人でも作業をしやすいマニュアルに更新しましょう。
ダブルチェックの徹底
ダブルチェックとは作成者とは別の第三者が再度内容を確かめることです。客観的な視点で確認することで一人では気付けないミスを発見できます。基本的なミスの対策としてほとんどの会社で取り入れられている方法です。
ただし、すべての業務にダブルチェックを導入すると手間や時間がかかりすぎてしまう傾向があります。ミスが起きやすい業務やミスが起きた場合に被害が広範におよぶ業務に絞って行うことがポイントです。
また、ただ漫然と2人で目を通すだけでは、もう一人がチェックするだろうと油断が生まれ、結果的にミスを見落としてしまいます。チェックすべき部分を明確にルール化するなど主体的に取り組める仕組み作りも大切です。
オフィス環境の改善
集中力は周囲の環境によっても左右されます。個人の机だけでなく、部署全体で集中しやすい環境づくりに取り組みましょう。作業デスク以外にも使える集中ブースの設置や会議室の確保、疲れたときにお茶やスナックで休憩できるリフレッシュスペースの整備などが考えられます。
さらに、集中力には二酸化炭素の濃度や室温も関係しています。オフィスを取り巻く環境をトータルで整えることで、経理以外の部門でも作業効率が上がるかもしれません。
また、テレワークの場合はなるべく仕事とプライベートのスペースを分けることをおすすめします。出社時間に部屋を移動することでスイッチが切り替わり、メリハリをつけて業務に取り組めるでしょう。
タスク管理
効率的にミスなく進めるには適切なタスク管理が欠かせません。タスク管理とは、業務を細かな作業に分割して優先順位を決める行為です。
例えば出社時に今日やることをリストアップし、優先度ごとに数字を振っておくと管理がしやすくなります。やることの内容や取り組む順番を明確にすると余計なことが頭から除かれ、目の前の業務に集中できるようになるでしょう。一つ一つチェックを入れることで達成感も得られます。
チーム全体で取り組む業務はスプレッドシートなど複数人で共有できるファイルを利用しましょう。それぞれが抱えている業務の進行具合を視覚化することで、一緒に同じタスクに取り組んでいる人も自分のスケジュールを調整しやすくなります。
業務の効率化
どれほどミスを減らそうとしても、ミスは一つの作業に対して一定の確率で起こります。そこで業務を効率化し、作業の工数を減らすことも検討しましょう。ミスが起きる余地を減らせるだけでなく、オーバーワークによる集中力の低下も防げます。上記で挙げたタスク管理は個人単位でできる効率化として代表的なものです。
部門全体でできる効率化の具体例としては、請求書や領収書の電子化・デジタル化の推進による手作業の削減、帳票書類のフォーマットの統一などが考えられます。個人単位でできる効率化と会社全体で取り組む効率化を組み合わせ、より働きやすく仕事に集中できる環境を構築しましょう。
システムの導入
帳票管理システムをはじめとした各種システムには便利な機能が多数搭載されています。中でも入力内容を自動で確かめてくれるサービスを利用すれば、人の目ではなかなか気付けなかった細かなミスを一瞬で検出してくれるでしょう。他の情報を元に内容を推測するオートコレクト機能を使えば、入力時の数字ミスも防げます。また書類をWeb上で送付すれば履歴が残るため、書類を送ったかどうか確認することも簡単です。
さらに、システムの中には改正電子帳簿保存法やインボイス制度に対応しているものも多くあります。担当者の知識がまだ追いついていない場合でも、システムの力を借りれば書類を不備なく作れます。上手に活用することで作業全体を効率化でき、他の業務により多くの時間をさけるでしょう。
まとめ
いかなる業務もミスを完全に防ぐことは難しいですが、経理は会社のお金を扱っていることからミスの修正に時間や手間がかかります。信用問題に発展することもあるため、極力ミスを減らすことが重要です。
人的エラーは業務の効率化によってある程度改善が見込めます。働いている個人だけでなく部門全体で取り組むべき課題と言えるでしょう。キャッシュレス化・ペーパーレス化や、システムの導入は業務効率向上の助けにもなります。
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