【企業向け】郵送費値上げに対するコスト削減とは?
公開日:2024年8月16日 更新日:2024年9月17日
書類や荷物の発送にかかる郵送費は年々上昇傾向にあり、2024年には郵便料金が値上がりすることが決まりました。郵便料金は2024年10月1日から新料金になります。郵送が多い企業にとって郵送費の値上げは直接的なコスト増につながるため、コスト削減を検討する必要があるでしょう。
本記事では郵送費の値上げの他、郵送費を削減するために企業が取れる対策についても紹介します。郵送費の削減を検討している企業はぜひ参考にしてください。
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郵送費の値上げは2024年10月から実施
総務省は2024年10月から手紙やはがきの郵送費を値上げすると発表しました。値上げの理由としては人件費と物流費の上昇を中心とした発送コストの増加、ならびにインフレによる物価の高騰が挙がっています。企業をはじめとする消費者にとっては負担が増えますが、総務省はサービスの質を維持するために必要な措置としています。なお今回の見直しは、情報通信行政・郵政行政審議会への諮問を経て、関係閣僚会議で承認を受けました。
具体的な値上げ例として定形郵便物の上限額が84円から110円に見直されます。定形郵便物以外にも、はがきの料金は現在の63円から85円に値上げされる予定です。特にはがきは需要が減少しており、取り扱いに関するコストが依然と比べて変動している点も理由として考えられます。
また通常の郵便物に加え、レターパックや速達などの郵便料金も値上げが決まりました。個人利用者だけでなく、企業も代替手段の検討が求められるでしょう。
※参考:総務省.「郵便法施行規則の一部を改正する省令案及び民間事業者による 信書の送達に関する法律施行規則の一部を改正する省令案に対する 意見募集の結果及び情報通信行政・郵政行政審議会からの答申」.
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu14_02000138.html ,(参照 2024-05-27).
※参考:日本郵便.「2024年10月1日(火)から郵便料金が変わります。」.
https://www.post.japanpost.jp/service/2024fee_change/index.html ,(参照 2024-06-18).
宅配便のコストも上昇傾向
日本郵政にとどまらず、宅配便各社も近年次々と値上げを発表しています。そのため、書類や荷物の発送にかかるコスト増は避けられない状況です。値上げを取り巻く現状や理由について下記で解説します。
各社の値上げ状況
郵便局以外の運送業者においても値上げの発表が続いています。例えば利用客の多い大手宅配各社は2023年4月から宅配運賃の値上げを発表しました。通常の宅配便だけでなく信書便、大型の宅配便、国際便などの運賃が対象となったことで、Eコマース業界や輸出入業務を行う企業にとっては事業に関わる痛手となっています。
日本郵便も「ゆうパック」という宅配サービスを扱っていますが、2023年10月に平均して10%ほどの値上げを実施しました。これは繰り返し述べているように各種コストの増加が理由で、先述した一般宅配業者の値上げと連動した形になっています。上記のいきさつから、今後も日本郵便に限らず運送業界全体の料金改定に動きがあると考えて良いでしょう。
宅配便が値上げされる理由
宅配便の値上げには複数の理由があります。
まずはガソリンをはじめとした燃料費の高騰です。世界情勢の変動により、近年レギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均価格は上昇傾向にあります。特に長距離輸送の場合は使用する燃料の量が多い分、かかる費用も必然的に増えるでしょう。
また労働人材の不足による労働環境の悪化も、見過ごせない要因です。待遇を改善するには給料を増やすなど抜本的な解決が不可欠です。円安に伴う物価上昇により、従来と同じ賃料で働くことが難しくなっているという環境もあいまって、人件費の確保は業界全体で困難な課題となっています。
他にも細かな理由はありますが、大きくこの2つの理由から宅配サービスのコストは年々増加しています。そのため、宅配運賃の値上げは今後も続くと考えられます。
企業にとって郵送費の削減が必要な理由
コストは企業の利益に影響する重要な要素です。そのため、郵送費に限らず、コストを削減し支出を減らすことは企業にとって多くのメリットがあります。コスト削減が必要な理由について改めて確認しておきましょう。
生産性を高めるため
生産性とは、企業が有しているリソースを最大限に活用し、より多くの商品やサービスを提供するための能力や効率性のことを指します。生産性が高い企業はより少ないリソースで多くの成果を上げられることから、生産性の向上は企業競争力やサービスの質を上げる鍵となります。
企業の体力とも呼べる生産力を上げるには、無駄を削り利益率を上げることが重要です。郵送の観点でいえば配送方法の最適化や郵送頻度の見直しが有効でしょう。また複数の配送業者を比較検討し、よりコストパフォーマンスの良い業者や手段を選ぶことも肝心です。生産性の向上は、さまざまな部署に良い影響を与えると考えられます。
事業を安定的に継続させるため
生産性の話とも重なりますが、郵送費をはじめとしたコストの削減は事業の安定した継続にも寄与します。特に近年は災害や感染症の拡大といった予測しにくいリスクに備えるために、事業継続計画を立てることの重要性が以前よりも高まっています。事業継続計画とは、緊急事態において被害を最小限にとどめ、なるべく早く業務を復旧するための計画書です。
自然災害やパンデミックの影響で企業活動が停止するリスクは決して小さくありません。コスト削減により安定した利益を確保できるようになれば、企業の財務状況が安定し、予測不可能な状況にも対応する余力が生まれると期待できます。
こうした状況において、郵送費は見直す余地のあるコストといえます。配送の頻度や方法を見直す他、電子メールやクラウドサービスの活用も発送コストの削減に貢献するでしょう。
資金を投資に充てるため
コスト削減に取り組むことで、企業は利益が増え、その一部を投資に回せるようになります。投資を増やすことで新技術の開発や優秀な人材の確保、新しい商品やサービスの提供など、多岐にわたる可能性が広がります。
郵送費は必要経費であるものの、できるだけ削減することで、投資に回せる資金を増やせるでしょう。発送費用の見直しにより浮いたコストは、企業の成長戦略にも活用できます。投資に回すことでさらに生産性を高め、事業を継続していくことが重要です。
変化していく環境の中で持続可能な成長基盤を整えるためにも、コストの見直しは継続的に実施する必要のある取り組みといえます。
郵送費の値上げに対するコスト削減方法
郵送費の値上げは今後も続く可能性があると予想されることから、今のうちによりコストを削減できる方法を探しておくことをおすすめします。早めに対策をしておくことで、値上げによるコスト増に備えられるはずです。郵送費の値上げに対するコスト削減方法について下記で解説します。
メールやシステムによる送付に切り替える
見積書や請求書といった書類をメール添付やシステムを介した送信に切り替えると、郵送費のコスト削減を見込めます。パソコンで作成した書類は、PDFなど改ざんを防げるファイルに変換することで、メールで電子的に送付することが可能です。
こうした切り替えのメリットとして、まずメール送信は迅速かつ低コストである点が挙げられます。書類を印刷したり封入したりといった人的な負担が減るだけでなく、手順がシンプルなことからミスの減少や効率化、ひいては心理的なコストの低減にもつながります。
さらに書類をWeb上で配信するシステムを導入すれば、作成や送付・保管までシステム上で実施できます。書類のステータス確認など、従来では確認が難しかった情報も一元的に確認できるようになるでしょう。
郵送費を最適化する
日本郵便は郵送区分の変更など利用者にとって最適なサービスを目指し、これまでに細かな改変を行っています。制定当初はベストな方法だった発送方法も、もしかしたらより適した方法が生まれているかもしれません。そのため郵送費の値上げに合わせて発送区分を再確認することで、郵送費の最適化の方法が見つかる可能性があります。
例えばダイレクトメールは、ターゲットとする顧客に対して直接的にアプローチできる一方で、大量に送付すると郵送費がかさみます。しかし一般郵便物ではなく広告郵便物を利用して郵送すれば、特定の条件を満たすことで割引を受けられ、コストの低減が狙えます。
定形郵便物や定形外郵便物、はがきは、郵便区番号ごとに区分することで郵便料金の割引が受けられる他、通数によって割引率も変わります。最適なプランは自社の方針や目的によって変わるので、事前に計画を立てて運用することで、最大の効果が望めるでしょう。
※参考:日本郵便.「経費を削減」.
https://www.post.japanpost.jp/business/keihi/index.html ,(参照 2024-06-18).
郵送時のパッケージを工夫する
郵便物は重さや大きさによって料金が変わるため、郵便物をよりコンパクトに梱包することで郵送費の削減につながる場合があります。細かな点ですが、通数が多ければ多いほどロスを削減できるので、取り組む価値は十分にあるといえるでしょう。
例えば、A4の書類はクリアファイルに入れてA4サイズのまま送るより、3つ折りにして定型郵便物として送った方が、料金を安く抑えられます。定形郵便物の範囲内で送ることを意識することが大切です。
またレターパックやスマートレターといったサービスを利用する方法もあります。一定のサイズ・重さの制限内であれば一律の料金で送れるため、重い書類や定形に収まらない小物を送る際に適しています。
その他、荷物を郵送する場合は必要以上に包装材や緩衝材を使用しないことで、郵送費だけでなく環境にかかるコストも軽減できるでしょう。
帳票書類の電子化で郵送費を削減
帳票書類の電子化にはメリットも多いですが、最大の効果を得るためには事前準備が不可欠です。業務フローが変わるため、あらかじめ流れを把握しておく必要があります。ここでは、帳票書類の電子化により期待できる効果と必要な準備について確認しましょう。
郵送費削減の効果
実際に郵送費を削減した場合の効果について計算してみましょう。今回の郵便料金の値上げにより、書類の郵送費は25グラム以下の定形郵便物で1通あたり31%、50グラム以下の定形郵便物で1通あたり17%のコスト増となります。
仮に毎月1,000通の書類を郵送していた場合、郵便料金の値上がり前は8.4万円、値上げ後の郵送料は11万円となることから、最終的な増加額は毎月で2.6万円、年額で31.2万円です。この郵送を全て電子化できた場合、増額分と元々の料金を合わせて毎月11万円、年間132万円の郵送費を削減できます。
このように、電子化による郵送費削減は長期的な財務戦略としても有効と考えられます。デジタル化への投資は初期費用がかかるものの、継続的なコスト削減をもたらすことから、積極的な検討が求められるでしょう。
書類を電子化して送付する方法
書類を電子化して送付する方法としては、先に述べたとおりメール添付や帳票作成・配信システムなどが考えられます。まずメールで送る場合、Wordなどのツールで作成したデータをPDF化することが一般的です。PDFは改ざんが難しいことから信頼性の高いデータを作成できること、導入コストが比較的安価であることから、初期費用をかけずに書類を電子化したい場合におすすめです。
帳票作成・配信システムを利用する方法は、初期費用や月額料金など運用に際して一定のコストがかかります。しかし、書類の送付・保管を含め一元的に管理できることから、メールより網羅的に情報を整理することが可能です。またセキュリティの堅牢さも魅力といえます。
どちらの方法であっても、書類での送付に比べると手間は軽減する傾向にあります。自社に適した方法を検討してみてください。
書類電子化の流れ
書類を電子化するには、まず電子化の目的やコストを明確にした上で方法を検討します。漠然とした理由では社員の教育やフローの変更に思わぬ手間がかかるかもしれません。社員が取り組みやすい具体的な目標を設定することで、最適な方法を選択しやすくなるはずです。
メール送付の形式ではなく帳票作成・配信システムを導入する場合は、電子帳簿保存法への対応、既存システムとの連携、セキュリティ体制などを確認します。次に、取引先に電子化する旨を伝え、対応が可能かどうかも確かめましょう。
なお帳票書類を電子化して送付する場合、電子帳簿保存法の電子取引に該当するため、発行側・受領側双方が電子データを保存する義務があります。また全ての取引先が電子化に対応できるわけではないため、取引先によっては郵送での対応が必要になるケースもあります。
スムーズな移行には取引先の同意が不可欠です。コミュニケーションを密にし、理解と協力を得られるよう働きかける必要があります。
まとめ
郵便料金や宅配便の運賃が相次いで値上げを決める中、企業は引き続き郵送コストの削減に取り組む必要があります。郵送費を削減するには郵便料金の最適化やパッケージの工夫など、いくつかの方法が考えられます。また帳票書類を電子化して送付することで、郵送費を大幅に削減できる可能性もあります。
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