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注文書(発注書)の保管期間は?保存方法や注意点を解説

注文書(発注書)の保管期間は?保存方法や注意点を解説

公開日:2024年5月15日 更新日:2024年9月17日

注文書や発注書を自社で発行した場合は「控え」、受領した場合は「原本」を保管する必要があります。注文書や発注書の保管期間は法律で定められているため、保管期間を確認しておくことが大切です。

本記事では、注文書(発注書)の保管期間や保存方法、保存する際の注意点などを解説します。なお、注文書と発注書は基本的に同じ書類を指すため、対処法も同じです。注文書・発注書の保管について確認しておきたい方は、ぜひ参考にしてください。

※参考:国税庁.「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

注文書(発注書)とは?

注文書(発注書)とは、商品やサービスの注文(発注)をするために発行する書類です。注文書と発注書は依頼の内容を明示するという意味で同じ書類を指しています。以下、本文では注文書と発注書を合わせて「注文書(発注書)」と表記します。

注文書(発注書)の役割

注文書(発注書)は取引の際に商品やサービスの注文内容や条件を記した書類です。商品やサービスを取引相手に注文・発注する際に発注側が発行し、受け取った受注側は、書類に記載された内容をもとに受注の意思を示します。

注文書(発注書)に含まれる主な情報は以下のとおりです。

・書類作成者の氏名や名称
・取引日時
・注文内容(数量、価格など)
・取引金額(原則税込)
・書類の交付される事業者の氏名や名称

他、必要に応じて下記の内容も追加されます。

・取引先の名称や住所
・支払条件 など

注文書(発注書)は、単にオーダーの内容を明らかにするだけでなく、条件を整理して双方の合意を確認するために必要です。取引の進行やトラブル時の証拠として法的な保護や請求の根拠となる他、後述するように下請法の適用内であれば発行が義務となっています。

双方の取引条件や内容が明確に記載されることから、取引に関する誤解やトラブルを防ぎ、円滑な取引を促進する点が大きなメリットです。注文書(発注書)を介することで取引の透明性が高まり、信頼関係の構築に貢献できるでしょう。

注文書(発注書)を発行または受領するタイミング

注文書(発注書)は一般的に、受注側が発行する見積書の後に発注側が発行します。発注側が提示された条件で問題ないか確認した後、受注側へ正式な注文をする際に発行する書類です。このタイミングで発行する理由としては、取引内容や条件をあらかじめ明確に整理して双方の合意を取り、取引後のトラブルを防ぐためです。

このため、商品やサービスの金額・取引条件などが事前に決まっている、あるいは定期的な発注で取引条件が変わらないといった場合、発注側が見積書を取らずに注文書(発注書)を発行する場合もあります。また注文を受けたことを明確にするために、注文書の発注後に、受注側が注文請書(発注請書)を発行するケースもあります。

なお特定の条件下を除けば、注文書(発注書)の発行は原則任意です。ただし取引の契約書の代わりとして注文書を扱う場合もあるため、注文書(発注書)の発行・受領は状況に応じて柔軟に判断しましょう。

注文書(発注書)の保管期間は?

法人は注文書(発注書)を原則7年間保管する必要があります。これは税法に定められた期限ですが、企業の業績によっては保管期間が伸びる可能性もあるでしょう。下請法で定められた期間も含め、以下で詳しく解説します。

※参考:国税庁.「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

保管期間は原則7年間

法人であれば注文書(発注書)の保管期間は原則7年間です。発行・受領日から起算して7年間ではなく、「事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」から数えて7年である点に注意が必要です。

3月決算の企業を例にとって考えましょう。2023年7月1日に受領した注文書(発注書)であれば、事業年度の期間は2024年3月までとなります。2023年度の確定申告書提出期限は2024年5月末日ですので、保管期限は2031年5月末日です。

ただし、上記の保管期間はあくまで欠損金など特別の事情がなかった場合に限ります。下記の2点に当てはまる法人は注文書(発注書)の保管期間が10年に延びるため、注意が必要です。

・欠損金が生じた、または欠損金の繰越控除を受ける(青色申告書を提出した事業年度)
・災害損失欠損金が生じた(青色申告書を提出しなかった事業年度)

なお10年保管する場合の事例については以下で詳しく解説します。

欠損金の繰越がある事業年度は10年間

欠損金とは事業年度において利益を上回った損失分、つまり赤字金額を指します。税金は収入から必要経費を差し引いた所得に対してかかることから、欠損金が出た法人は法人税が免除されます。

欠損金に関する税制度に「欠損金繰越控除」があります。これは事業年度の10年以内に欠損金が生じていた場合、当期に欠損金を繰り越して控除を受けられる制度です。

例えば1年目で赤字が出たものの2年目で大きく利益を伸ばした会社があるとします。初めての黒字にもかかわらず2年目の所得を基準に多額の法人税を課されると、その後の健全な企業運営が厳しくなるでしょう。こうした事態を防ぐため、当期の所得金額の50%(中小法人等については全額)まで損金算入できる繰越制度が設けられているのです。

欠損金繰越控除を受ける事業年度で発行・受領した注文書(発注書)は、欠損金が出た年度と同様に10年間保管する必要があります。

下請法が適用される場合は2年間

下請法が適用される取引の場合、下請け会社が不当な不利益を被らないよう、親会社は注文書(発注書)の発行を含む4つの義務を果たさなければなりません。具体的には以下の4点です。

1.書面の交付義務
2.支払期日を定める義務
3.書類の作成・保存義務
4.遅延利息の支払義務

※出典:公正取引委員会.「下請法 知っておきたい豆情報 その1」

上記のリストにもあるとおり、親会社は注文書(発注書)を発行するだけでなく一定期間保管する必要があります。下請法では2年と定められていますが、先述のとおり注文書(発注書)は税法上7年もしくは10年保管する必要があるため、下請法にのっとっているからといって保管期間に特別の注意を払う必要はないでしょう。

万が一2年以内に注文書(発注書)を破棄・紛失した場合は、税法だけでなく下請法上も問題になる可能性があります。自社に適した方法で、無理なく安全に書類を管理することが大切です。

※参考:公正取引委員会.「下請法 知っておきたい豆情報 その1」

注文書(発注書)の保存方法

注文書(発注書)を保存する方法は以下の3パターンが考えられます。

・紙で受け取った書類を紙で保管する
・紙で受け取った書類をスキャナ保存し、電子データで保管する
・電子データで受け取った書類を電子データで保管する

それぞれの方法や、保存に関係する電子帳簿保存法について下記で解説します。

紙で保存する場合

紙で届いた注文書(発注書)は、後述するスキャナ保存の他に、そのまま保存しておくという方法があります。注文書(発注書)を紙のまま保管する際のコツは、後で検索しやすいようにファイリングすることです。例えば取引先や取引年月日など特定のインデックスごとにファイルを分けると効果的です。シールやラベル、付箋などで目印を付けると分かりやすいでしょう。

また、保管書類の定期的な点検や保管状況の確認も重要です。必要な情報をすぐに見つけられるようにすることで、保存期限内に誤って書類を破棄するリスクも軽減できます。

紙をスキャンして保存する場合

紙で届いた注文書(発注書)は、電子帳簿保存法で定められた一定の要件を満たせば、スキャナで電子化して保存することも可能です。紙での保存は、ファイルの準備や保管スペースの確保などの点でコストがかかります。また紙の劣化や破損、紛失のリスクもあるため、電子化して保存することも検討しましょう。

電子保存するために事前の申請は不要です。電子データとして保存することでファイリングや保管場所の確保などが不要になり、管理や検索もしやすくなります。

スキャナ保存ができる書類は契約書や納品書などの「重要書類」と注文書(発注書)、見積書などの「一般書類」の2種類に分かれます。一般書類の保存要項について下記の表にまとめましたので、ご参照ください。

入力期間の制限 入力期間の厳密な制限なし(受領後できるだけ速やかにスキャナ保存する)
一定の解像度による読み取り 解像度200dpi相当以上で読み取ること
カラー画像による読み取り カラー、グレースケールどちらでも可
タイムスタンプの付与 スキャン後、タイムスタンプを付与すること。タイムスタンプは総務大臣が認定する業務に係るタイムスタンプに限る。なお入力期間内にスキャナ保存されたことを確認できる場合は不要
ヴァージョン管理 下記のいずれかを用意する
・訂正・削除があった場合内容を確認できるシステム
・訂正・削除ができないシステム
見読可能装置等の備付け 14インチ(映像面の最大径が35cm)以上のカラーディスプレイおよびカラープリンタ(グレースケールデータであればカラー対応なしでも可)の用意。合わせて操作説明書を備え付けること
速やかに出力すること スキャナデータを次の1~4の状態で速やかに出力できるようにすること
1.整然とした形式
2.書類と同じくらいはっきりしている
3.拡大・縮小して出力できる
4.4ポイントの大きさの文字を認識できる
システム概要書等の備付け スキャナ保存するシステムなどの概要書、仕様書、操作説明書、スキャナ保存に関する手順や担当部署などを明らかにした書類を備え付けること
検索機能の確保 次の要件でスキャナデータの検索ができること
1.取引年⽉日その他の日付、取引金額および取引先での検索
2.日付または金額に係る記録項目について範囲を指定しての検索
3.2以上の任意の記録項目を組み合わせての検索
※税務職員による質問検査権に基づくスキャナデータのダウンロードの求めに応じられるようにしている場合には、2および3の要件は不要

※参考:国税庁.「はじめませんか、書類のスキャナ保存」

電子データで保存する場合

電子データで受け取った注文書(発注書)を保管する時も、電子帳簿保存法の規定を遵守する必要があります。2022年の法改正により、2024年4月現在、電子データで受け取った書類を紙に出力して保存することは認められていません。法律を守るという規範面だけでなく、情報の流出を防ぐというセキュリティ面においても適切な管理が重要です。

電子取引記録の保存要項を下記のとおりまとめました。紙の書類をスキャナ保存する場合と重なる面もありますので、確認してみてください。

真実性の要件 下記のいずれかの対応をすること
1.タイムスタンプを付与した後に取引情報をやり取りする
2.取引情報をやり取りした後速やかにタイムスタンプを付与し、保存者または監督者に関する情報が閲覧できるようにする
3.記録事項の訂正や削除があった場合にこれらの事実や内容が確認できるシステム、または改ざんができないシステムを使う
4.正当な理由のない訂正・削除を防止する事務処理規定を定め、規定に沿って運用する
可視性の要件 1.保存場所にスキャナ保存するシステムなどの仕様書、操作説明書、スキャナ保存に関する手順や担当部署などを明らかにした書類を備え付けること
2.システムの概要書を備え付けること
3.検索機能を確保すること

※参考:国税庁.「電子帳簿保存法が改正されました」.

注文書(発注書)を電子化して保管する場合の注意点

注文書(発注書)を電子化して保管するには、単にスキャナ保存してフォルダに入れれば良いというわけではありません。企業の取引に関わる重要な書類を適切に保管するには社員の協力を踏まえた環境整備が必要不可欠でしょう。注文書(発注書)を電子化して保管する際の注意点についてまとめました。

電子帳簿保存法の要件を確認する

注文書(発注書)を保管する際は電子帳簿保存法に準拠しましょう。違反があった場合、企業に罰則が科せられるおそれがあるだけでなく、信用低下につながる可能性もあります。

電子帳簿保存法を守るためには、データの適切なバックアップやセキュリティ対策、定期的なデータの点検や整理が重要です。また法令やガイドラインの最新情報を把握し、社員教育も含め法律を順守するための体制を整える必要もあります。電子帳簿保存法に対応したシステムを導入すれば、こうした教育コストや維持コストの低減が見込めます。

電子データを保管する際のルールを定める

注文書(発注書)を電子化して保管するには、企業内でルールを統一する必要があります。ファイル名やファイル形式、フォルダの使い方などのルールを決め、データ整理の方法を統一しましょう。取引書類の電子化に伴いシステムを導入する場合は、社員が機能や使い方を学ぶ機会を設けることも必要です。

またセキュリティ性を高めるには、データの保存方法だけでなくパスワードやバックアップなどの方法も検討しましょう。アクセス権限の設定や暗号化、定期的なパスワードの変更など、外部に情報を漏らさないための工夫が求められます。

まとめ

注文書(発注書)の保管期間は原則7年間、欠損金の繰越控除を受ける場合は10年間です。またこれらの書類は電子帳簿保存法における一般書類に該当するため、電子データで保存する場合は法律の要件に従う必要があります。社内で電子データを保管するルールを決め、セキュリティ対策も含めた適切な管理を目指しましょう。

コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』は、注文書(発注書)などの帳票書類を電子化して送付できるクラウドサービスです。「アーカイブ電子帳簿保存法オプション」がJIIMA認証を取得しているため、電子帳簿保存法の要件に従った保存が可能です。注文書(発注書)の電子保存を検討している場合はぜひご利用ください。

※参考:国税庁.「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)

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