納品書兼請求書とは?書き方と注意点を解説
公開日:2024年5月15日 更新日:2024年7月22日
企業が他社と取引する際には納品書や請求書をそれぞれ発行することが一般的ですが、納品書兼請求書を発行するケースもあります。納品書兼請求書は納品書と請求書を1枚にまとめた書類で、別途請求書を発行しなくても納品書と請求書を同時に送ることができるため、非常に便利です。
この記事では、納品書兼請求書の書き方や注意点について詳しく解説します。納品書兼請求書にすれば作成や送付の手間を減らせることから、書類の発行業務を効率化できる可能性があります。ぜひ参考にしてください。
TOPICS
納品書兼請求書の役割
納品書兼請求書は企業間取引において、どのような役割があるのでしょうか。最初に、納品書兼請求書が果たす役割や具体的に用いられるケースについて詳しく解説します。
納品書兼請求書は2つの役割を持つ
納品書兼請求書は、その名のとおり納品書と請求書の2つの役割を持ちます。別々に発行する場合、発行するタイミングが異なりますが、納品書兼請求書は同時に発行が可能です。ここでは、納品書と請求書がそれぞれどのような役割を果たしているかを詳しく解説します。
納品書としての役割
納品書とは、商品を発注側に引き渡す際に添付する書類のことです。受注側が商品やサービスの納品に際し、一緒に納品書を送付することで、内容や個数、単価などを確認しやすくするという役割を果たしています。また納品書に次いで発行する請求書と照らし合わせることで、内容に問題がないかを確認することが可能です。
法律上、納品書の発行が義務付けられているわけではありませんが、取引をスムーズに進める上では重要な書類です。納品書を発行することでトラブルの防止にもつながるため、商品やサービスを納品する際に発行するケースが多く見られます。
納品書の発行は義務ではありませんが、発行した場合は、発行側は控え、受領側は原本を一定期間保管するという法律上の義務が生じます。
請求書としての役割
請求書は通常、納品が完了した後に発行する書類のことです。納品した商品やサービスの代金を支払ってもらうために、受注側が発行します。請求書を発行するタイミングは、取引が完了する都度発行するケースもあれば、複数回の取引をまとめて発行するケースもあります。自社の方針や取引先の希望に合わせて、請求書を発行するタイミングを決めましょう。
納品書と同様、請求書も法律上発行する義務はありませんが、取引先から代金を正確に支払ってもらうために発行することが一般的です。なお請求書を発行した後は法的な効力が発生し、納品書と同様、双方に一定期間の保存義務も生じるという点を併せて押さえておきましょう。
納品書兼請求書が用いられるケース
前述のとおり、納品書は商品やサービスを納品する際に発行し、請求書は納品が完了した後に別々に発行・送付することが一般的です。
しかし、1回限りの取引では納品書と請求書を兼ねた納品書兼請求書を発行することもあります。また複数回取引がある場合でも、都度代金を請求するような取引では、納品書兼請求書を発行することもあるでしょう。加えてプログラムやデザイン、イラストのデータなど、物理的な納品物がない取引でも、納品書兼請求書が用いられるケースが多いようです。
納品書兼請求書にすれば納品時にまとめて送付できるため、納品が完了した後に別途請求書を送る必要はありません。
納品書兼請求書の保管期間
納品書兼請求書は取引を証明する重要な書類であるため、発行側は控え、受領側は原本を一定期間保管しなければなりません。
保管期間は法人税法で7年間と定められているため、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保管する必要があります。ただし、欠損金繰越控除を受ける事業年度や、青色申告書を提出せず災害損失金額が生じた事業年度は10年間の保管が必要になるため、その点には注意してください。
加えて、紙で発行・受領した場合は紙で保管できますが、PDFなどの電子データで発行・受領した場合は電子データでの保管が義務付けられています。法律に従った方法で適切に保管することが重要です。
納品書兼請求書を発行するメリット
納品書兼請求書を発行すると、費用や時間の節約が可能です。ここでは納品書兼請求書の具体的なメリットについて、コスト削減や業務効率化の観点から解説します。
コストを削減できる
納品書兼請求書であれば1回の送付で済むため、納品書と請求書を別々に送付する場合と比較して、コストを削減することができます。1枚の書類にまとめることで、用紙や封筒にかかる費用、印刷費、郵送費の削減が可能です。
1回ごとのコスト削減額はあまり大きくないかもしれませんが、毎月数十枚~数百枚の納品書や請求書を発行する場合は大きな差になります。納品書兼請求書で対応できるケースであれば、まとめて発行・送付した方が経済的です。
発行の手間がかからない
納品書と請求書を別々に発行する場合に比べて、発行に手間がかからないことも、納品書兼請求書のメリットです。納品書や請求書はミスが許されないため、書類の作成から郵送までに相応の手間と時間がかかります。しかし、1回の発行で終えることができれば作成や郵送の手間を省くことが可能となり、業務効率化にもつながります。
特に、納品書や請求書の発行枚数が多い場合は、業務の大幅な効率化が見込めます。業務効率化が実現できれば、人手不足や繁忙期にも対応しやすくなります。
書類を管理しやすい
納品書兼請求書に切り替えることで、書類の管理もしやすくなります。前述のとおり、納品書や請求書は一定期間保管しなければなりません。そのため別々に発行した場合、1回の取引で2枚保管する必要があります。
その点納品書兼請求書であれば1枚で良いため、書類も管理しやすくなります。加えて、発行枚数が多ければ多いほど保管スペースの節約にもつながります。オフィスが狭い場合は、できるだけ保管する書類の枚数を少なくできるように工夫することが大切です。
納品書兼請求書の書き方
納品書兼請求書は法的に発行が義務付けられているわけではありませんが、発行する際は、納品書と請求書の役割を果たせるように作成する必要があります。一般的に記載が必要となる項目や書き方について詳しく解説します。
納品書兼請求書に記載する項目
納品書兼請求書に記載する主な項目について解説します。各項目の書き方や注意点なども解説するので、納品書兼請求書を作成する際の参考にしてください。
発行者の氏名・名称
納品書兼請求書は、商品やサービスを納品した側が発行します。そのため、発行者の氏名・名称には納入企業名を記載しましょう。実務上は、企業名だけでなく住所や連絡先も記載するパターンが多く見られます。
取引年月日
納品書兼請求書には、取引年月日を記載する必要があります。記載する日付に法的な決まりはありませんが、出荷日を記載することが一般的です。ただし、企業によっては商品の到着予定日を記載することもあるため、取引先との間でルールを決めておくと良いでしょう。
取引内容
納品書兼請求書には、取引内容として納品した商品の型番や品名、数量などを記載します。数量を表しにくい商品の場合は「一式」とまとめて記載することも可能です。商品が軽減税率の対象品目であれば、その旨も記載します。
請求金額
納品書兼請求書には、請求金額として納品した商品の単価、小計を記載し、さらに小計と消費税の合計金額を書類の上部に記載します。改ざん防止のために「¥」を入れることも併せて覚えておきましょう。また請求金額の支払い期日や振込先を記載するケースもあります。
発行先の氏名・名称
納品書兼請求書には、書類の発行先に当たる受領する側の氏名や名称を記載します。送付先の住所や部署名まで記載することが一般的です。加えて、企業名や部署名の場合は敬称として「御中」を付けます。担当者名まで記載する場合は、個人名に「様」を付けましょう。
インボイスとして発行する場合の記載項目
2023年10月1日からインボイス制度が開始されました。取引先からインボイス(適格請求書)の発行を求められた場合、納品書兼請求書をインボイスとして発行することもできます。ただし、納品書兼請求書をインボイスとして発行する場合は、一定の要件を満たさなければなりません。具体的には、以下の項目を追加する必要があります。
・書類作成者の氏名または名称および登録番号
・取引年月日
・取引内容
・税率ごとに区分して合計した税込対価(または税抜対価)の額および適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等
・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
従前の納品書兼請求書のフォーマットがこれらの項目を網羅していなかった場合は、網羅できる形にフォーマットを変更しましょう。
納品書兼請求書の見本
納品書兼請求書のフォーマット例を紹介します。
NO.〇〇〇〇
納品書兼請求書
〇〇年〇〇月〇〇日
■■■■■株式会社 御中
株式会社△△△
〒〇〇〇
住所:〇〇〇
電話:〇〇〇
FAX:〇〇〇
下記のとおり、納品およびご請求申し上げます。
請求金額:¥〇〇〇〇〇〇円(税込)
製品名 | 型番 | 単価 | 数量 | 金額 |
小計(税抜):¥〇〇〇
消費税(10%):¥〇〇〇
合計(税込):¥〇〇〇
(以下略)
お支払い期限:〇〇年〇〇月〇〇日
お振込先:〇〇銀行〇〇支店
普通0000000
納品書兼請求書を発行する際の注意点
納品書兼請求書は、取引を進める上で重要な情報となる書類でもあるため、間違いがないように発行しましょう。ここでは、具体的な注意点について解説します。
取引年月日を確認する
納品書兼請求書を作成・発行する際は取引年月日の扱いについて確認しておくことが大切です。前述のとおり、納品書兼請求書に記載する取引年月日は、出荷日を記載することが多くなっています。ただし、取引先の要望で商品の到着日や検収日を記載するケースもあります。
書類の日付は代金の支払い日に影響することもあるため、具体的な日付は事前に取引先に確認しておくと良いでしょう。事前に確認することで、再発行の手間も省けます。
送付先を確認する
納品先と請求先が異なることもあるため、事前に書類の送付先を確認しておくことも重要です。納品書兼請求書は経理部門に送ることが一般的ですが、取引先によっては納品先に送ることもあります。
このあたりの扱いを確認せずに書類を送付してしまうと、後でトラブルになる場合もあるため注意が必要です。事前に取引先に送付先を問い合わせ、問題がないか確認してから発送手続きを進めていきましょう。
納品物と一緒に送付する
納品書兼請求書は、商品を納品するタイミングで一緒に送るケースが多く見られます。これは、納品書兼請求書がその名のとおり納品書の役割を兼ねており、納品物を確認する際に必要になるためです。実際に商品やサービスを納品する前に送付してしまわないよう、送付するタイミングには注意しましょう。
取引先から具体的に送付方法や送付先、送付のタイミングを指定された場合は、それに従うこともあります。
納品書兼請求書は電子化することも可能
取引先の了承を得ることが前提になりますが、納品書兼請求書は電子化して発行することもできます。事前にテンプレートを用意しておけば、必要事項を入力するだけで作成できるため便利です。さらにそのデータをメールに添付して送付すれば、印刷や郵送の手間や費用も省けます。
ただし、メールに添付する場合は迷惑メールと判断されるケースもあるため、セキュリティ対策という意味でも専用の配信システムを導入することがおすすめです。システムを導入すれば書類の発行だけでなく、保管も簡単にできます。発行から保管までスムーズに進められるため、業務効率化に役立つことが大きなメリットです。
まとめ
納品書兼請求書は、納品書と請求書を1枚で発行・送付できるため、コスト削減や業務効率化につながります。納品のタイミングで一緒に送付することが多いですが、書類の日付や送付先の扱いは事前に取引先に確認しておきましょう。さらなる業務効率化を望むなら、請求書兼領収書を電子化して送付することもおすすめです。
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