注文請書に収入印紙は必要?電子契約では不要になる理由と併せて解説
公開日:2024年2月16日 更新日:2024年3月15日
企業が注文を受けた際に、発注した企業に対して注文請書を発行・送付することがあります。注文請書の発行時、契約内容によっては収入印紙の貼り付けが必要になるケースがあるため注意が必要です。ただし電子契約の場合は、契約内容にかかわらず収入印紙が不要になります。
本記事では、注文請書に収入印紙が必要なケースや不要なケース、電子契約では収入印紙が不要になる理由を解説します。国税庁の見解や国会答弁の内容なども取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
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TOPICS
注文請書とは
注文請書とは、注文を受けた側が発行するもので、発注を受けたことを示す書類です。発注側が発行する注文書とは、明確に異なります。以下、注文請書を発行する目的や注文書との違い、記載項目を解説します。
注文請書を発行する目的
注文請書とは、企業が注文を受けた際に発注側に対して、注文を受けたことを明確にする目的で発行する書類です。基本的には受注側が主体的に発行するものですが、発注側から注文請書の発行を依頼されるケースもあります。
注文請書には具体的な取引の内容を記載し、発注側に確認してもらうことでトラブルを防止する目的もあります。受注した商品やサービスの詳細、価格、納期、支払い条件などが記載されているため、双方の間での認識の相違を防ぎやすいことが特徴です。
注文請書は、受注側が法律上必ず発行しなければならないものではなく、あくまでも任意です。上記のように発注側からの依頼がない場合は、発行しなかったとしても特に法的な問題は発生しません。
注文請書と注文書の違い
注文請書と注文書(発注書)の違いは、書類を発行する主体です。注文書は、商品やサービスの発注側が受注側に対して発行する書類です。一方で、注文請書は受注側が発行するものであり、注文書で確認した内容を確認して問題がなければ、注文請書を発行する流れになります。
上記からも分かるように、注文書と注文請書の取引条件は基本的に同一です。注文請書の発行は、注文書を受け取った後、商品やサービスを納品する前のタイミングで行われることが一般的です。この流れに沿って進めることで、取引に関する認識の相違を防げます。
このように、注文請書と注文書は別物ですが、どちらもビジネス取引での合意形成のために欠かせない書類です。
注文請書の記載項目
注文請書の記載項目は、以下のとおりです。
記載項目 | 説明 |
発行日 | 注文請書を発行した日付 |
発注者の名称(企業名) | 注文請書の発行先、つまり商品やサービスを発注した企業や個人の正式名称 |
受注者の名称(企業名) | 注文請書を発行する企業や個人、つまり商品やサービスを提供する側の正式名称 |
受注内容 | 商品名、品番、単価、数量、小計など、注文された商品やサービスの詳細 |
納期 | 商品の納品やサービスの提供が完了する予定の日付 |
納品方法 | 郵送や自社配送など、商品の納品方法 |
支払い方法 | 支払い条件(前払い、後払い、分割払いなど)や、支払い方法(銀行振込、現金、クレジットカードなど)の情報 |
なお、金額の詳細は請求書でやり取りをするため、注文請書に銀行口座の情報を記載する必要はありません。
注文請書に収入印紙は必要?
注文請書に収入印紙が必要かどうかは、取引内容によって異なります。請負契約に該当するものであれば、収入印紙が必要です。以下、収入印紙が必要になるケースと、請負契約・売買契約の違いを解説します。
請負契約の場合は必要
注文請書に収入印紙が必要かどうかは、注文請書に記載された取引内容や取引金額によって異なります。注文請書の内容が請負契約に当たる場合で、なおかつ取引金額が1万円以上の場合は、収入印紙の貼り付けが必要です。印紙税法によれば、請負契約は課税文書として扱われており、取引金額に応じた収入印紙を用意しなければなりません。
一方、注文請書の内容が売買契約に該当する場合、または請負契約でも取引金額が1万円未満の場合は収入印紙が不要となります。請負契約と売買契約の判断が難しいと感じる場合もあるかもしれませんが、基本的には仕事の完成に重きを置いているかどうかで判断できます。
請負契約と売買契約の違い
請負契約は仕事を完成させることを目的とした契約であり、一方の売買契約は所有権の移転を目的とした契約です。請負契約と売買契約の判断基準は、以下のとおりです。
区分 | 内容 | 事例 |
請負契約 | 一方の当事者(受注者)が特定の仕事の完成を約束し、もう一方の当事者(発注者)がその仕事の完成に対して報酬を支払う。取引金額が1万円以上の場合は、収入印紙が必要 | ソフトウェア開発、記事の執筆、イベントの企画・運営、建築工事など |
売買契約 | 一方の当事者(売り主)が特定の物品をもう一方の当事者(買い主)に引き渡し、買い主がその物品に対して代金を支払う。基本的に収入印紙は不要 | 不動産の売買、自動車の販売、家電製品の購入など |
まとめると、請負契約は仕事の結果、売買契約は物品が対象です。
注文請書に貼る収入印紙の金額
前述のように、注文請書が請負契約に該当し、取引金額が1万円以上の場合は収入印紙の貼り付けが必要です。収入印紙の金額(印紙税)は、注文請書に記載された金額によって異なり、取引金額が高くなるほど印紙税も高くなります。
印紙税の金額は、以下の表のとおりです。
記載された契約金額 | 税額 |
1万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
100万円超~200万円以下 | 400円 |
200万円超~300万円以下 | 1,000円 |
300万円超~500万円以下 | 2,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 6万円 |
1億円超~5億円以下 | 10万円 |
5億円超~10億円以下 | 20万円 |
10億円超~50億円以下 | 40万円 |
50億円超~ | 60万円 |
なお、金額の記載がない場合は、印紙税は200円となります。
注文請書に収入印紙を貼る際の注意点
注文請書に収入印紙を貼る際は、いくつかの注意点を意識しなければなりません。収入印紙の費用負担や貼り忘れ、消費税など、重要なポイントを解説します。
収入印紙の費用負担
まず注意したいことは、収入印紙の費用負担です。収入印紙を貼る場合、購入費用を注文請書の発行者・受領者が合意の上でどちらが負担するか決めます。
選択肢としては、発行者または受領者の一方が負担するか、双方で折半するかのどちらかです。ただし取引金額が億単位にならなければ、印紙税もそれほど高くはならないため、基本的には注文請書の発行者が負担するケースが多いとされています。
ただし発注側が依頼して注文請書を発行するような場合もあるので、あらかじめ双方で話し合うことが望ましいです。
収入印紙を貼り忘れた場合
印紙税は、契約書や領収書など一定の文書に対して課される税金で、法的に規定されているものです。収入印紙が必要であるにもかかわらず、注文請書に収入印紙を貼らなかった場合は過怠税が課せられます。過怠税の額は、未納付の印紙税額に応じて異なります。
また、収入印紙に消印がない場合も、過怠税の課税対象になることがあるので注意が必要です。過怠税が課される可能性がある場合は、税務署に相談してどのように対処すべきか指導を受けましょう。
収入印紙にかかる消費税
注文請書に貼り付けるための収入印紙を購入する際、消費税の取り扱いは、購入場所によって異なります。
例えば郵便局やコンビニエンスストアなどで購入した場合、基本的に消費税は非課税になります。なぜかというと、収入印紙は国や地方公共団体への納付を目的とした印紙税の一形態であり、印紙の購入自体が直接的な税金の支払いに相当するためです。
一方で、金券ショップなどで売られている収入印紙は、政府や郵便局から委託されたものではなく、誰かが売ったものです。金券ショップで収入印紙を購入する場合は、商品の売買とみなされるため、消費税が課税されます。
注文請書に収入印紙が不要なケース
前述のとおり、注文請書に収入印紙が不要なケースもいくつかあります。具体的には、以下の4つです。
・取引内容が売買契約の場合
・契約金額が1万円未満の場合
・契約書に収入印紙を貼り付けている場合
・注文請書を電子データで送付した場合
それぞれのケースを詳しく解説します。
取引内容が売買契約の場合
前述のとおり、収入印紙は注文請書の取引内容が請負契約に該当する場合に必要です。一方で注文請書の内容が売買契約に該当する場合、収入印紙は不要となります。
ただし継続的な売買契約の場合は、課税文書に該当する可能性もあるなど、判断が難しいケースもいくつかあります。自分だけで判断できない場合は、税務署や税理士などの専門家に確認するとよいでしょう。
契約金額が1万円未満の場合
注文請書の取引内容が請負契約に該当する場合であっても、契約金額が1万円未満の場合は収入印紙が不要になります。印紙税法で、一定額未満の契約の場合は、印紙税の納付義務を免除しているためです。
ただし注文請書に契約金額の記載がない場合、印紙税法ではその文書を最低税率の対象とみなすため、100万円以下のケースと同様200円分の収入印紙が必要になります。
契約書に収入印紙を貼り付けている場合
契約書に収入印紙を貼り付けている場合、その取引に関連する注文請書には、収入印紙を貼り付ける必要がありません。注文請書にも収入印紙を貼ると、同一の取引内容に対して、二重に印紙税を納付することになるからです。
税務署によれば、求められる税額よりも高い収入印紙を貼ったり、必要がないのにもかかわらず貼ったりしたような場合は還付を受けられます。「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」に必要事項を記入し、税務署に提出するのが基本的な流れです。
注文請書を電子データで送付した場合
注文請書を電子データで送付する場合も、収入印紙の貼り付けは不要となります。理由は、印紙税法はあくまでも紙ベースの文書に対して印紙税を課しており、電子文書にはその規定が適用されないからです。
具体的には、メールで送付した場合やFAXで送付した場合、電子契約の場合が該当します。ただし注文請書を電子データで作成し、印刷してから送付する場合は、収入印紙が必要です。紙の場合と同様、契約金額に応じて適切な額面の収入印紙を貼ります。
電子契約では収入印紙が不要になる理由
電子契約では収入印紙が不要になる根拠としては、以下の3つがあります。
・印紙税法基本通達
・国税庁の見解(ホームページ)
・国会答弁(第162回国会・常会)
それぞれの概要を詳しく解説します。
印紙税法基本通達
電子契約で収入印紙が不要になる根拠の1つが、印紙税法基本通達です。印紙税法基本通達では、印紙税法の適用に関する運用方法を定めており、どのような場合に印紙税が課されるのか、どのような文書が課税文書に該当するのかなどが明確にされています。
印紙税法基本通達によると、印紙税が課せられるのは課税文書を作成し、相手に交付されたときとされています。なお、課税文書の作成とは、紙に契約内容を記載して交付することです。
しかし、電子契約の締結後に電子データを相手に送信することは交付に当たらないとされるため、電子契約では印紙税が課せられません。電子契約の締結後に電子データをプリントアウトした場合も、課税文書には該当しないようです。
国税庁の見解
国税庁のホームページでは、注文請書について以下のような見解が示されています。
『注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。』
※出典:国税庁. 「(別紙)」
収入印紙が必要かどうかの判断の軸は、注文請書の現物の交付があるかどうかです。
つまり、注文請書をPDFファイルに変換して電子メールやFAXで送付した場合は、課税文書を作成したことにはなりません。電子データは課税文書に該当しないため、印紙税が不要となります。
国会答弁
第162回国会(常会)の国会答弁においては、電磁的記録により作成された文書の課税について、以下のように述べられています。
『事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。』
※出典:参議院. 「質問主意書」
上記のとおり、電子データで作成された文書は課税対象になりません。以上のように、印紙税法基本通達や国税庁の見解、国会答弁などさまざまな根拠により電子契約では収入印紙が不要であることが示されています。
注文請書を電子化するメリット
注文請書を電子化するメリットは、大きく分けてコスト削減と業務効率化の2つです。
前述のとおり、注文請書を電子化すれば収入印紙が不要になるため、コスト削減につながります。特に注文請書の発行数が多い場合は、収入印紙だけでなく印刷代や郵送代などのコスト削減の影響も大きいでしょう。
注文請書の発行や送付にも時間がかからないため、業務効率化を実現できることも、注文請書を電子化するメリットです。発行または受領した注文請書は、そのまま電子データで保管できるので、保管場所の確保も不要になります。
注文請書を電子化する際は、システムを導入することが一般的です。コストや業務効率で課題を感じている場合は、導入を検討してみるとよいでしょう。
まとめ
注文請書の取引内容が請負契約に該当し、なおかつ取引金額が1万円を超える場合は、印紙税の課税対象となり収入印紙が必要です。ただし売買契約や電子契約の場合は、課税文書に該当しないため、収入印紙が不要になります。
注文請書を電子化することで、収入印紙や印刷・郵送代が不要になるため、コスト削減や業務効率化につながります。電子化する場合は、システムの導入を検討しましょう。
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