請求書に印鑑は必要ない?印鑑の種類や電子印鑑の法的効力について解説
公開日:2024年1月25日 更新日:2024年3月15日
請求書を発行する際、印鑑は必要なのか気になっている方もいるでしょう。印鑑を押す場合、どの印鑑を使えばよいのか、どのように押印するのかなど迷うケースも多く見られます。
本記事では、請求書に印鑑は必要か、請求書に押す印鑑の種類やポイントを解説します。請求書を電子化したい場合、印鑑の取り扱いはどうなるのか、電子印鑑は法的に有効なのかも併せて解説するので、請求書の電子化を検討している場合もぜひ参考にしてください。
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TOPICS
請求書に印鑑は必要か
法律上では、印鑑がなかったとしても、請求書はそのまま機能します。請求書に押印されている理由は、書類の信頼性をより高めるため、慣習的に使われているからです。まずは請求書と印鑑の関係性を解説します。
法的には請求書に印鑑は必要ない
法律上、請求書に印鑑を押さなければならないとされている訳ではないため、印鑑がなくても請求書は有効です。
少なくとも日本の場合は、請求書に印鑑が押されているかどうかよりも、必要な情報を含んでいるかどうかの方が重要です。例え請求書に押印がなくても、相手方には支払い義務が生じます。
そもそも請求書自体も法的に発行する義務はなく、請求書が発行されないケースもあります。ただし、企業間取引においては掛け取引が多く、金額や支払期限を明確にするためにも請求書を発行するのが一般的です。
請求書に印鑑を押す理由
前述のとおり、法的には請求書の押印は不要とされているものの、実際には請求書に印鑑を押して発行するケースが多いとされています。ここでは主な理由として、請求書の信頼性を高める点と正式書類として扱われやすい点について解説します。
請求書の信頼性を高めるため
請求書に印鑑を押しておくと各種書類の信頼性を高めることが可能です。例えば、印鑑がないものと比較すると複製や改ざんを防ぎやすくなります。
刑法159条「私文書偽造等」によれば、押印されていない文書の偽造よりも、印鑑が押されている文書の偽造がより重い刑罰となります(※)。印鑑を押しておくことで、偽造・改ざんの抑止にもつながるでしょう。
印鑑があることで請求書の信頼性が高まり、偽造や不正発行を疑われにくいため、企業によっては請求書の押印が必須とされているケースが少なくありません。
※参考:e-GOV法令検索.「刑法」
正式な書類として受理されやすい
日本では、慣習的に印鑑が押された書類が正式なものであるとされてきました。そのため、請求書にも印鑑を押して正式な書類とする企業が多いです。
取引先によっては、請求書に押印がない場合は受理しないケースもあります。請求書を発行する場合は、自社のポリシーだけではなく、取引先の社内規定も考慮する必要がある点にも注意しましょう。
請求書に押す印鑑の種類は?
請求書に押す印鑑の種類としては、角印が一般的です。法人が使用する印鑑の種類は以下の3つがあり、用途によって使い分けられていることが多いでしょう。
・実印
・銀行印
・角印
ここでは、それぞれの特徴や使い分けを詳しく解説します。
法人の場合は角印が一般的
請求書に押す印鑑の種類は法律で決められている訳ではありませんが、法人の認印として使用されている角印を使うことが一般的です。
角印は、一般的な円形の印鑑とは異なり、押印した際の形が四角になっている印鑑を指します。登録する必要はなく、書類を発行する際によく使用される印鑑です。なお法的な観点からは、角印か丸印かといった印鑑の形状は効力に影響を与えません。
また印鑑を押す代わりに印鑑の画像データを請求書に貼り付けて、請求書を発行するケースもあります。先ほども触れましたが、そもそも印鑑がなくても請求書は有効なので、印刷した画像データを用いても問題ありません。
法人が使用する印鑑の種類と使い分け
法人が使用する印鑑には、角印以外にもさまざまな種類があり、必要に応じて正しく使い分けることが重要です。ここまでの内容を踏まえて、法人が使用する印鑑の主な種類と、それぞれの使い分けを詳しく解説します。
実印
実印は、法務局や市区町村役場で登録された印鑑です。企業活動での重要書類に押すための印鑑で、よく知られている代表的な用途は会社の登記です。他にも契約書や株券の発行などの押印に使用されます。
企業の場合、実印には会社名と代表者名が刻印されており、代表者印として用いられるケースもあります。実印はその重要性から、日常的な文書や大量に発行される請求書などに押印する際には、ほとんど使用しません。
実印は、法人が使用する印鑑の中でも重要性が高いものです。複製などの不正使用を防ぐために安全な場所に保管する必要があります。また印影が変わらないように過度な使用を控えるなど、管理を徹底することが重要です。そのため日々の業務には実印ではなく、他の印鑑を使用するケースが多いでしょう。
銀行印
銀行印は、銀行口座を開設する際に登録される印鑑です。具体的には預金の引き出しや、口座名義の変更、手形・小切手の発行など銀行口座に関連するさまざまな手続きに使われます。近年はインターネットバンキングを利用する企業が多くなったため、従来に比べれば見かける機会は減ってしまいました。
企業によっては実印を銀行印として使用するケースもあります。ただし、実印は重要な印鑑であるため、持ち出しや管理が厳しく制限されているケースがほとんどです。そのため、実印とは別に銀行印を作り、銀行で手続きが必要になった際に使用することが一般的です。
銀行印は実印と同様、適切な管理が必要になるため、一般的には請求書に使用されません。
角印
角印は日々行われる業務で使用されることが多い印鑑です。特に形などが厳しく定められているわけではありませんが、角型(四角型)が主流になっていることからこのように呼ばれています。
実印や銀行印とは異なり、認印に該当する印鑑で、前述のとおり請求書の印鑑として使われることも多くあります。法務局や銀行などに登録している印鑑ではないため、請求書以外にも、日常的に発行する書類への押印に適しています。
実印や銀行印は丸形の印鑑が主流となっているため、区別するために角形の印鑑を使うケースがほとんどです。また郵便物の受け取りや社内での書類の確認など、より日常的な業務には角印以外の認印やシャチハタが使用されることもあります。
請求書に印鑑を押す際のポイント
請求書に印鑑を押す際のポイントは、以下の3点です。
・社名の右側に押す
・印影が鮮明になるように押す
・訂正印は使わない
企業によっても押印のルールは異なりますが、一般的には上記のように押印します。ここでは、それぞれのポイントを詳しく解説します。
社名の右側に押す
請求書に印鑑を押す際のポイントとしてまず押さえておきたいことは、社名の右側に押すことです。請求書に押す印鑑の位置については特に規定はありませんが、ビジネス文書の慣習として社名の右側に押すことが多いでしょう。
請求書の複製や改ざんを防ぐため、印鑑は文書の文字に部分的に被せて押されるケースがほとんどです。印影と文字が重なっていることで、文書がオリジナルであると示し、改ざんのリスクを減らせます。
印影が鮮明になるように押す
印影がきれいに写るようにしっかりと押印し、かすれたり、欠けたりしないように気を付けることも重要です。印影が不鮮明の場合は、請求書としての信用度が低くなってしまう可能性があります。
印鑑を押す際には、均等な圧力を適用して、印影が文書全体に均一に伝わるようにします。印鑑の表面が清潔であり、損傷がないかどうかを確認することも重要です。
一度押した印鑑を再度押すと、印影が重なって不鮮明になることがあるため、一度で鮮明な印影を残すように心がけることも重要です。
訂正印は使わない
請求書に印鑑を押す際は、訂正印の使用を避けましょう。請求書の内容にミスがあった際は、訂正印ではなく請求書自体を再発行することが基本です。請求書に訂正印を使用すると、どの部分が訂正されたのかが不明確になり、取引内容があやふやになってしまうためです。
もし請求書を送付した後に再発行する場合は、「再発行」と記して、どの請求書が最新かつ有効であるかを明確にしましょう。再発行した請求書には、備考欄などに再発行の理由を記載し、取引の透明性を確保します。
電子請求書を発行する場合は電子印鑑で対応する
昨今では経理業務の自動化や電子化が浸透しており、電子請求書を発行する場合も少なくありません。電子請求書を発行する際は、実際の印鑑ではなく、電子印鑑で対応することが基本です。電子印鑑の概要や法的有効性、セキュリティ、用意する方法などを詳しく解説します。
電子印鑑とは
業務のDX化が進む中で、請求書を紙ではなく電子化して送付するケースも増えています。電子請求書を発行する場合は、電子印鑑を使用することが基本です。
電子印鑑とは、印影を画像データ化したものです。主に電子文書やPDFなどのデジタルフォーマットの文書に使用され、その文書が正式なものであることを示します。
電子印鑑なら、実物の印鑑がなくても押印できるため、社外で請求書を作成する際にも使用できます。リモートワークやオンラインでの取引が増える中、電子印鑑は遠隔地からでも文書に押印できることが大きな利点です。
デジタルデータを使って押印するため、紙・インクが必要なく、印鑑の傷や破損、インクの劣化などの問題が発生しないこともメリットといえます。
電子印鑑の法的有効性
結論からいえば、電子印鑑は紙の請求書に認印を押した場合と同じ効力を持ちます。ただしここで注意しておきたいのが、紙の請求書に押した認印は実印とは異なり、登録された印鑑ではなく本人が押印したことを証明できない点です。
同様に、電子印鑑の場合も請求書としての法的効力はありますが、本人が押したことを証明できません。電子文書の信用力を高めるためには、識別情報が含まれる電子印鑑を使用するか、電子署名により本人が作成したものであることを証明する必要があります。
電子署名は、デジタル形式の文書において署名者の身元を確認し、文書の信頼性を保証するための技術です。本人性(本人が署名をしているかどうか)を担保するだけでなく、改ざんを防止する役割も担っています。
電子印鑑のセキュリティ
電子印鑑を用いる際は、セキュリティ面を考慮することが重要です。例えば印影を画像データ化しただけの電子印鑑は、簡単に偽造や改ざんができるため、セキュリティが低いと言えます。形式的に押すだけの場合は問題ありませんが、重要性の高い文書を発行する際にはより高いセキュリティ性が必要です。
また、前述のとおり電子印鑑単体では認印と同じ扱いなので、本人が押印したものかどうかを証明できません。そのため、電子印鑑のセキュリティを高めたい場合には、複製できない方法で電子印鑑を作成する必要があります。
セキュリティの高い電子印鑑とは、印影に識別情報が含まれている電子印鑑です。自分で作成するのではなく、識別情報を含んだ印影を作成してくれるサービスやシステムを活用することが一般的です。
電子印鑑を用意する方法
電子印鑑を用意する方法は、主に以下の3つです。
1.印影をスキャンして画像データ化する
2.WordやExcelの機能を使って印鑑の図を作成する
3.無料または有料のソフト・ツールを使って作成する
1つ目は、白紙に印鑑を押してスキャナーなどでスキャンするだけで作成できるため、とても簡単な方法です。ただし単なる画像に過ぎないため、当然ながら複製などのリスクがあります。
2つ目も同様に簡易な方法ではありますが、一定のパターンから印鑑の図を作成するため、悪用のリスクからは逃れられません。
3つ目の方法は、セキュリティ面では安全な方法です。有料の印鑑作成ツールを使用すれば、識別情報を含んだ印影など、セキュリティの高い電子印鑑を作成できます。
電子請求書のセキュリティを高めるには?
電子請求書のセキュリティを高めるためには、改ざんや複製ができないファイルで送ることと、セキュリティ性の高いシステムを導入することの2点を意識しましょう。それぞれのポイントを詳しく解説します。
改ざんや複製ができないファイルで送る
電子請求書のセキュリティを高める重要なポイントは、改ざんや複製ができないファイルで送ることです。請求書を電子化して送付する場合は、PDFファイルなどの形式に変換した上で送付しましょう。
ただし、PDFでも編集ソフトを使用すれば簡単に改ざんできてしまう点には注意が必要です。PDFの編集ソフトは広く浸透していますし、WordやExcelなどのファイル形式に変換し、中身を編集するといった方法もあります。
PDFファイルで電子請求書を送付する際は、パスワードを設定して編集できないようにすることが重要です。加えて、コピーや印刷を制限する設定をしておくと、さまざまな不正利用に幅広く対応できるようになります。
セキュリティ性の高いシステムを導入する
電子請求書のセキュリティを高めるには、システムを導入する方法もあります。システムには大きく分けて以下の2種類があります。
・オンプレミス型:企業が自社のデータセンターなどにシステムやサーバーを設置し、自ら管理・運用する方式
・クラウド型:インターネット上のサーバーで提供されているサービスやアプリケーションを利用する方式
クラウド型のシステムであれば導入がしやすく、セキュリティ対策に力を入れているサービスも多くあります。例えば、不正アクセスの防止やアクセスログの管理、通信の暗号化などの対策です。
PDFファイルをメールで送信するよりもミスが起こりにくく、情報漏えいの防止にもつながるため、システムの導入はなるべく選択肢に含めておくとよいでしょう。
まとめ
請求書の印鑑は法的には必ず必要とされている訳ではありませんが、慣習的に押印が必要とされるケースが多くあります。請求書に印鑑を押す場合は、認印として使われている角印を使用することが一般的です。
請求書を電子化する場合は電子印鑑を利用する方法もありますが、改ざんや複製を防止するためにはセキュリティ対策が必要です。
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