【2023年版】電子帳簿保存法のタイムスタンプとは?不要なケースや必要なケース
公開日:2023年10月16日 更新日:2024年4月17日
電子帳簿保存法では、電子化された書類が原本であることを確認できるように、タイムスタンプの付与が求められるケースがあります。タイムスタンプがどのようなときに必要・不要であるのか、判断に迷う方も多いのではないでしょうか。
契約など業務に携わる管理部、総務部、法務部のような部署の方であれば、タイムスタンプの必要要件はぜひ確認しておきたいところです。そこで本記事では、電子帳簿保存法においてタイムスタンプが必要なケース、不要なケースを詳しく解説します。
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TOPICS
電子帳簿保存法とは、どのような法律なのか
タイムスタンプの必要要件を確認する前に、電子帳簿保存法がそもそもどのような法律なのか理解しておく必要があります。ここでは、電子帳簿保存法の範囲や電子取引データの保存方法、改正に伴う主な変更点などを解説します。
電子帳簿保存法の範囲
電子帳簿保存法とは、帳簿や書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。範囲としては、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つに区分されます。
電子帳簿等保存は、電子的に作成した帳簿や書類をデータのまま保存することです。例えば、会計ソフトなどで作成したデータの保存などが該当します。
スキャナ保存は、紙の書類で受け取った書類をスキャニングして、画像データで保存することです。
電子取引は、電子的にやり取りした書類をデータで保存するケースを指します。昨今では、領収書や請求書などの書類を電子データで交わす機会も増えてきました。こうしたやり取りは基本的に電子取引に該当し、データの保存が求められます。
電子取引データの保存方法
電子取引データを保存する際には、電子帳簿等保存法で定められた要件を満たす必要があります。具体的な保存要件は以下のとおりです。
・システム概要に関する書類の備え付け
・見読可能装置の備え付け
・検索機能の確保(「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できるようにする)
・データの真実性を担保する措置
データの真実性を担保する措置は、以下のうちいずれかを行う必要があります。
・タイムスタンプが付与された書類の授受
・データの授受後、速やかにタイムスタンプを付与する
・データの訂正・削除が記録可能、または訂正・削除ができないシステムでデータを受け取って保存する
・正当な理由のない訂正削除の防止に関する事務処理規程を定め、規程に沿った運用をする
1つ目の「タイムスタンプが付与された書類」を受け取るためには、取引相手にタイムスタンプのシステムが導入されていなければなりません。2つ目、3つ目に関しては、自社側にタイムスタンプのシステムが必要です。
4つ目については、国税庁がサンプルを公表しているため、社内で電子データの取り扱い規程を定める際に活用できます。電子取引データの保存システムを利用している場合でも、データのやり取りはシステム以外の方法で行うこともあるため、事務処理規程に従った真実性の担保が必要です。
2023年の電子帳簿保存法改正に伴う主な変更点
2023年の電子帳簿保存法改正では、電子取引データ保存において主に3つの点が変更されました。1点目は検索要件がすべて不要となる対象者が見直されたことです。以前は「基準期間(2課税年度前)の売上高が1,000万円以下の保存義務者」でしたが、5,000 万円以下に変更されています。
2点目は新しい対象として、「電子取引データをプリントアウトし、取引年月日や取引先などで整理された状態で提示・提出できること」が追加されました。
3点目は電子取引のデータ保存について令和4年度税制改正で措置された宥恕措置(経過措置のようなもの)が2023年12月31日をもって廃止されることです。これにより原則として、電子取引はデータ保存する義務が発生します。
タイムスタンプとは
そもそもタイムスタンプがどのようなものなのか、詳しく理解できていない方も多いかもしれません。ここでは、タイムスタンプの役割や基本的な仕組み、発行手順(要求・発行・検証)を解説します。
タイムスタンプの役割
タイムスタンプとは、電子データが改ざんされていないことを証明するために用いられている技術で、時刻認証局(TSA)によって電子文書に付与されます。あくまでも電子的なものであり、紙に押すような物理的スタンプではありません。
タイムスタンプを付与すれば、以下の2点を証明できます。
・タイムスタンプが付与された時刻より前に電子文書が存在していたこと
・タイムスタンプが付与された時刻以降、電子文書が改ざんされていないこと
例えば契約書類などは、当事者間の合意や権利・義務などを文書化したものであり、信頼性が求められます。タイムスタンプの付与によって、紙に比べて改ざんされやすい電子書類の信頼性を担保できます。
タイムスタンプの仕組み
タイムスタンプの仕組みとして理解しておきたいことは、ハッシュ値です。タイムスタンプの付与を依頼する際、元データをハッシュ関数により置き換えたハッシュ値が用いられます。関数を使う都合上、異なる2つの入力データが同じハッシュ値を持つ可能性はゼロではありませんが、非常に稀な確率とされています。
ハッシュ値およびハッシュ関数の利点は、数値から元データを解読することが極めて困難で、ハッシュ値に置き換えられたデータから情報漏えいする可能性がほとんどないことです。
元データが書き換えられるとハッシュ値も変わる仕組みになっており、時刻認証局(TSA)が保有しているハッシュ値と同じであることが、改ざんしていないことの証明になります。
タイムスタンプの発行手順
タイムスタンプは「要求」「発行」「検証」の3つの手順で付与されます。電子書類の信頼性を担保するための重要なプロセスなので、細かく理解しておくとよいでしょう。ここでは、各プロセスを解説します。
要求
「要求」とは、電子文書をハッシュ値に置き換えて時刻認証局(TSA)に送ることです。タイムスタンプを付与する機能を有したシステムや、電子データ保存サービスなどを通じて行います。ちなみにハッシュ値は、メッセージダイジェストと呼ばれることもあります。
タイムスタンプを要求すべき時期は企業によって異なりますが、有効期間を過ぎてしまった場合は、要求をしてタイムスタンプをしても認められません。有効期間については、後の項目で詳しく解説します。
発行
時刻認証局(TSA)は受け取ったハッシュ値を時刻情報と結合させ、タイムスタンプトークンを発行します。これが「発行」のプロセスです。時刻情報との結合は、偽造ができないように行われることが一般的で、これがタイムスタンプが押された書類の信頼性を担保します。
発行されたタイムスタンプトークンは利用者へ送付され、電子文書の原本とともに保存されます。
検証
「検証」とは、電子文書が改ざんされていないことを見るプロセスです。元データから生成したハッシュ値と、タイムスタンプのハッシュ値を比較して、改ざんが行われていないか確認します。
タイムスタンプ自体の信頼性はどうなのかと疑問に感じる方も多いかもしれませんが、タイムスタンプにデジタル署名を付与して、いわゆる民事訴訟法上で求められる真正性を証明できます。
改正電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの取り扱い
電子帳簿保存法の改正により、タイムスタンプの要件が緩和されました。ここでは、改正電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの取り扱いを細かく解説します。
タイムスタンプが不要なケース
改正電子帳簿保存法で、修正や訂正の履歴が残るシステムで作成された電子帳簿は、タイムスタンプの付与が不要となりました。電子帳簿に該当する書類には、仕訳帳や総勘定元帳の他、自社で発行した注文書や領収書の控え、貸借対照表、損益計算書などが含まれます。
さらにスキャナ保存でも、タイムスタンプが不要なケースが追加されました。具体的には、電子データを訂正・削除した履歴が残るクラウドシステムを使用し、決められた入力期間内にデータを保存したことが確認できれば、タイムスタンプは必要ありません。
電子取引では、発行者側でタイムスタンプが付与されていれば、受領者側では不要です。発行者側で付与がなくても、受信者側がデータを改ざんできないシステムを使用している場合は不要となりました。
つまり、どのケースにおいても電子帳簿保存法に対応したシステムを利用していれば、原則としてタイムスタンプは不要となります。
タイムスタンプが必要なケース
電子帳簿保存法に対応したシステムを利用している場合、原則としてタイムスタンプは不要ですが、一方でタイムスタンプが必要なケースもあります。例えばスキャナ保存をする際に、電子データの訂正や削除の履歴が残らない場合は、当然タイムスタンプが必要です。
なおタイムスタンプの付与期間は主に2つに限定されます。1つは、おおむね7営業日以内に付与する早期入力方式です。もう1つは最長2カ月+おおむね7営業日以内に付与する業務サイクル方式になります。先ほども触れたように、期間を過ぎてしまうとタイムスタンプが認められないので注意しましょう。
電子取引では、送信者側でタイムスタンプの付与がなく、受信者側でデータの改ざんができないシステムを利用していない場合はタイムスタンプが必要です。
タイムスタンプを利用するには
タイムスタンプを利用する際は、まず時刻認証局(TSA)と契約する必要があります。仕組み自体はそれほど難しくありませんが、利用するまでにはある程度の手間がかかる点に注意しましょう。ここでは、タイムスタンプを利用する際の具体的な方法を解説します。
時刻認証局(TSA)と契約する
タイムスタンプを利用するには、時刻認証局(TSA)との契約が必要です。そして時刻認証局(TSA)が運用するアプリケーションなどを通じて、タイムスタンプを付与してもらいます。
時刻認証局(TSA)は複数あるので、アプリケーションや料金プランを比較して選ぶことがおすすめです。
日本では、海外とのデータ流通を容易にするなどの背景もあり、総務大臣の認定制度を置いています。総務大臣に認定されている時刻認証局(TSA)は、「セイコータイムスタンプサービス」「MINDタイムスタンプサービス」「アマノタイムスタンプサービス3161」の3つです。
タイムスタンプの付与に対応するサービスを導入する
タイムスタンプの付与に対応しているシステムを導入する方法もあります。例えば会計システムや電子契約システムには、システムから簡単にタイムスタンプを利用できるものがあります。
利用料金はシステムによって異なりますが、時刻認証局(TSA)へ支払う料金が含まれているケースがほとんどです。そのため時刻認証局(TSA)との契約とは異なり、別途費用を負担する必要がありません。
会計システムはそれぞれ異なる特徴を持っているため、慎重に比較検討する必要があります。
タイムスタンプを利用する際の流れ
タイムスタンプを利用する際は、書類を用意してからデータを作成・アップロードすることが基本です。ここでは、タイムスタンプを利用する際の流れを簡単に解説します。
1.書類を用意する
まずは、タイムスタンプを利用したい書類を作成します。署名や捺印のある書類でもタイムスタンプの付与が可能です。
2.データを作成する
用意した書類を、画像やPDFなどの電子データに変換します。変換方法としてはスキャンが一般的ですが、スマートフォンで撮影した場合も、写真が電子データとして機能します。
ファイル形式によってはタイムスタンプが付与できない場合があるため、あらかじめサービス内容を確認することが重要です。
3.データをアップロードする
次に、タイムスタンプを付与したい電子データを選択し、会計システムなどのプラットフォームにアップロードします。
電子的に作成した書類やシステム上で作成した書類は、アップロードが不要になる場合もあります。詳しくは、自社で使用している会計システムや、電子契約システムの情報を確認してください。
4.タイムスタンプが付与される
電子データをアップロードすると、その時点でシステムに提携している時刻認証局(TSA)のタイムスタンプが付与されます。タイムスタンプは、自動的に付与されることが一般的です。
タイムスタンプを利用する際にかかる費用
タイムスタンプを利用する際にかかる費用としては、大きく分けてシステム導入の初期費用とランニングコストの2種類です。ここでは、それぞれの費用を詳しく解説します。
システム導入の初期費用
タイムスタンプを利用するためにシステムを導入する場合は、初期費用がかかります。初期費用はシステムによって大きく異なるため、利用したいシステムごとに確認が必要です。
会員登録の際にかかる費用は数千円から1万円程度、システムの導入費は10〜30万円程度が目安です。システムの公式サイトに料金が記載されていなかったり、初期費用が安い分高額なランニングコストがかかったりするケースも多いため、個別に問い合わせるようにしましょう。
ランニングコスト
初期費用とあわせて想定しておきたいのがランニングコストです。会員登録で月額費用が発生する、タイムスタンプの発行ごとに費用がかかるなどのパターンがあります。先述したように、スタンプの付与にかかる費用が、システムの料金プランに含まれているケースも珍しくありません。
タイムスタンプの発行ごとに料金が発生する場合、1スタンプごとの相場は10円程度です。月にどれくらいのタイムスタンプを利用するのか、あらかじめシミュレーションをしておくとよいでしょう。
タイムスタンプを利用する上での注意点
タイムスタンプを利用する上での注意点は、タイムスタンプは期限内に付与することと、原本の破棄は社内規程に従うことの2点です。タイムスタンプの効力にも関わる項目なので、必ず理解しておきましょう。
ここでは、それぞれのポイントを詳しく解説します。
タイムスタンプは期限内に付与する
1つ目は、タイムスタンプは期限内に付与することです。もし期限内に付与しなければ、契約書の内容が無効になるおそれもあります。
電子帳簿保存法の改正により、タイムスタンプの付与期限は以下のように変更されました。
改正前 | 3営業日以内 |
改正後 | 最長2カ月+7営業日以内 |
付与期限が長くなったため、契約書の内容が無効になってしまうリスクは減りましたが、逆に油断して付与を忘れてしまう可能性もあります。改正前に引き続き、付与を忘れないように注意しましょう。
原本の破棄は社内規程に従う
2つ目は、原本の破棄は社内規程に従うことです。電子帳簿保存法の改正により、タイムスタンプを付与した後は、原本を破棄できるようになりました。ただし、企業によって原本の取り扱い方法が異なり、社内規程により一定期間保管しているケースもあります。
例えば、定期検査で契約書の内容に不備があった際など、原本が求められる場面は少なくありません。タイムスタンプを付与したからといって、自己判断で原本を捨てないように気をつけましょう。原本の破棄に関する社内規程がない場合には、社内で方針を決めておく必要があります。
まとめ
電子帳簿保存法の改正により、タイムスタンプの要件が緩和されました。電子文書の保管はタイムスタンプが不要なケースと必要なケースがあるため、規程をよく確認しておく必要があります。
タイムスタンプには付与期限が定められているため、ワークフローの整備も重要なポイントになります。原本の破棄に関する社内規程も整備し、円滑に業務が進められるような体制を作りましょう。
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電子化した帳票類の送信時や、電子化した帳票類を保存する際に、タイムスタンプを自動付与する機能もあります。電子帳簿保存法に対応したデータ管理も可能なので、経理業務の電子化にぜひお役立てください。
@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)