経理業務のRPA活用事例│RPAを上手に使いこなすコツも紹介
公開日:2023年9月19日 更新日:2024年4月17日
経理部門では、担当者の業務負担や人手不足が課題になっているケースも少なくありません。RPAを導入すれば、経理業務を自動化して作業負担を軽減できるなど、さまざまな課題に対処できる可能性があります。しかしRPAがそもそもどのようなものなのか、詳しく理解できていない担当者の方も多いかもしれません。
そこで本記事では、RPAとは何か、経理業務への活用方法や使いこなすコツなどをご紹介します。経理業務の効率化を目指している場合は、ぜひ参考にしてください。
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TOPICS
RPAとは
RPA(Robotic Process Automation)とは、パソコン上での作業を自動化できるロボット技術のことです。ここでは、RPAで自動化できる業務や、導入により見込まれる効果などを解説します。
RPAで自動化できる作業
RPAの導入により、従来人間が手作業で行っていた一連の業務プロセスの自動化が可能です。パソコンのマウス操作や入力作業などを記録すれば、特定の作業のシナリオを作成できます。
RPAは、同じ作業を繰り返す必要がある場合でも、一度の設定で自動的に作業を進められます。具体的には、データ収集や読み取り、転記、チェック作業、レポート作成など、パソコンのデスクトップ上で行える作業を自動化するのが一般的です。
RPA導入により見込める効果
RPAの導入によって定型業務を自動化すれば、業務の効率化が実現できます。例えば、プログラムを書かなくてもシナリオ作成ができるため、IT人材が不足している企業でも業務の幅が広がるでしょう。
同じ作業を自動化できるため、担当者の負担が減少し、長時間労働の削減につながるケースもあります。RPAは、上記のような人手不足の解消や長時間労働の削減、生産性向上など、さまざまな課題を解決できる可能性があります。
RPAは経理業務の効率化に適している?
RPAは、経理業務の効率化に適しているといえます。その理由は以下のとおりです。
・定型業務が多い
・大量のデータを扱う
・複数のアプリを使用する
上記3つの理由をそれぞれ詳しく解説します。
定型業務が多い
RPAが経理業務の効率化に適している理由は、業務の中で入力や転記などの単純作業も多いからです。具体例としては、入金チェックや振込リスト作成、データの編集などの作業があります。
また経理業務では、一定のフォーマットに従った請求書などの帳票の作成が求められます。こういったあらかじめ手順が決められている単純作業・定型業務は、RPAが得意とする分野です。
大量のデータを扱う
大量のデータを扱うのも重要なポイントです。経理業務では、経理データの入力や請求書の発行など、企業によっては大量のデータを扱う場面が多くあります。
大量のデータの中から該当するデータを見つけ出して集計することもあり、複雑なデータ処理が担当者にとって負担となることが少なくありません。
RPAを活用すれば、大量のデータの中から必要なデータを抽出したり、データの処理や加工をしたりすることも可能です。人が行うと時間がかかる作業をRPAで自動化すれば、作業時間の大幅な削減につながるでしょう。
複数のアプリを使用する
複数のアプリを横断するのも、RPAが経理業務の効率化に適している理由です。経理業務では経理システムやエクセル、ワードなど複数のアプリケーションを使用する機会が多くあります。
それぞれのアプリケーションを連携できていないと、無駄な作業が生じてしまうケースも珍しくありません。RPAは複数のアプリケーションを使用する作業も自動化できるため、経理業務の効率化に適しています。
RPAの活用に向いている経理業務とは?
RPAの活用に向いている経理業務としては、以下のようなものが挙げられます。
・負担になっている業務
・自動化しやすい業務
・難易度の低い業務
上記の業務をそれぞれ解説します。
負担になっている業務
まずは、担当者の負担になっている業務から自動化することがおすすめです。経理部門では、大量のデータを扱う業務や長時間の単純作業、ミスが発生しやすい業務などが負担となることが多くあります。これらの業務は、自動化によって効率化が期待できます。
現場の担当者にヒアリングを行い、負担になっている業務がないかを確認することが重要です。現場の声を反映させることで、RPAによる改善効果の高い業務を選定できます。
自動化しやすい業務
もともと定型化している作業など、自動化しやすい経理業務から導入することも効果的でしょう。RPAはルールの中で判断・処理を行う特性があるため、手順化されている業務の自動化が容易です。
業務を細分化していくことで、自動化しやすい作業かどうか判断しやすくなります。業務フローを明確にし、自動化の対象とする業務を洗い出しましょう。作業の一部を自動化し、それ以外の作業を人が行う方法もあります。
難易度の低い業務
経理業務の中でも難易度の低い作業を選定し、RPAによって自動化していく方法もあります。対象となる業務の具体例は、データの入力や転記、定型的な帳票の作成などです。
複雑な作業を自動化する場合、シナリオ作成に時間がかかる可能性があります。なぜなら複雑な業務は、多くのルールや判断基準が必要となるからです。まずは単純作業から自動化を始め、そこから徐々に範囲を広げていくなど、段階的な導入を検討してみましょう。
経理業務にRPAを導入するメリット
経理業務にRPAを導入するメリットは、以下の4つです。
・処理速度が向上する
・単純ミスを防止できる
・コア業務に専念できる
・人手不足の解消につながる
上記のメリットをそれぞれ解説します。
処理速度が向上する
1つ目のメリットは、経理業務の処理速度が向上することです。例えば伝票のデータ入力を人間が行う場合、さまざまな伝票を確認しながら行うため、どうしても時間がかかってしまいます。
さらに人間が行う場合、同じ作業を続けていたことによる疲労やストレスでパフォーマンスが低下するケースがあるのに対し、RPAのロボットは肉体的・精神的な疲労がありません。長時間同じ作業を続けたとしても処理速度が落ちず、安定したパフォーマンスを発揮します。
単純ミスを防止できる
2つ目のメリットは、単純ミスを防止できることです。経理業務は金銭を取り扱うため、小さな計算ミスも見逃せません。ミスの内容によっては、企業の信用に関わる重大な問題に発展する可能性もあるため、担当者のプレッシャーも大きいでしょう。
とはいえ人間の場合、同じ業務を続けていると集中力が欠如し、ヒューマンエラーが発生する可能性もあります。RPAであれば、どれだけ同じ作業を継続したとしても正確な処理ができるため、ヒューマンエラーによるミスを大きく減らせます。
コア業務に専念できる
3つ目のメリットは、コア業務に専念できることです。RPAの導入によって単純作業が自動化されると、担当者には時間的な余裕が生まれます。これにより、単純作業に追われることなく、マネジメントや戦略の立案など、より高度な業務に専念できるようになるでしょう。
人間が経理業務の単純作業から離れ、創造的な仕事に関わる時間が増えてくると、企業にとってもイノベーションのチャンスが生まれます。企業全体の生産性の向上や、中長期的な成長といった面でも、RPAが果たす役割は大きいでしょう。
人手不足の解消につながる
4つ目のメリットは、人手不足の解消につながることです。経理部門では専門知識が必要な業務もありますが、人手不足により適した人材が見つからないことも珍しくありません。
しかしRPAの導入によって、単純作業の自動化により作業時間を大幅に削減できれば、少ない人数でも効率的に作業を進められます。 長時間労働の削減にもつながるため、従業員のエンゲージメントを高めるといった観点でも、RPAの導入は大きなメリットをもたらすでしょう。
経理業務におけるRPA活用事例
RPAの導入を考えている場合は、活用事例を参考にすることがおすすめです。具体的には、以下のような使い方があります。
・伝票のデータ入力
・入金確認
・交通費の金額確認
・振込先の登録
・帳票書類の作成
・入出金管理表の作成
伝票のデータ入力
経理業務におけるRPA活用事例としてよく挙げられることが、伝票のデータ入力です。経理部門ではさまざまな伝票を取り扱うため、データの転記作業が頻繁に発生します。転記作業は単調で時間がかかり、人の手によるミスも起きやすい部分です。
RPAを活用すれば、データの転記作業の自動化ができます。具体的には、取引先企業から届いた伝票データをロボットが読み込み、所定のシステムに自動で転記する(請求書などの帳票作成も可)といった作業です。
入金確認
入金確認もRPAの活用事例としてよく知られています。経理業務における入金確認は、取引先から振り込まれた代金をチェックする重要な作業です。預金明細と帳簿の内容を照合するだけでなく、会計システムへの入力が必要となります。
単純でありつつミスの起こりやすい業務ですが、RPAの活用により、このプロセスの自動化が可能です。預金明細と帳簿の内容を照合し、会計システムへ入力するところまで自動化できるため、業務効率を大きく高められるでしょう。
交通費の金額確認
交通費の金額確認は、従業員から申請された出張交通費や通勤交通費の金額をチェックする経理業務で、こちらもRPAを活用できます。
具体的には、申請データを取得し、申請された金額と経路や区間が一致するかを自動で確認します。承認プロセスも自動化できるため、人間の担当者が一つずつチェックするのと比べて、作業時間を大幅に削減可能です。
ただし申請データの正確性が求められるため、従業員からの申請プロセスも整備する必要があるといった点には注意しましょう。
振込先の登録
支払い業務において、振込先のデータ入力は重要な経理業務ですが、こちらもRPAによって自動化できます。例えばRPAを導入すれば、自動的に振込先のリストを作成可能です。
取引先や従業員から提供された振込先のデータを取得し、取得したデータを整理した後、会計システムや銀行システムに登録するのが基本的な流れになります。振込先のリストが作成されるため、振込作業をスムーズかつ正確に行えることが大きなメリットです。
帳票書類の作成
帳票書類の作成も、RPAで自動化できます。経理業務における請求書や納品書などの帳票書類の作成は、時間と労力を要する作業であり、担当者にとって負担になりやすい部分です。
本記事でも触れているように、決まったフォーマットへ入力する作業は、RPAの得意とする分野になります。RPAを活用すれば、請求金額の算出や帳票書類作成まで自動化できるため、従業員の負担削減や業務効率化に大いに役立てられるでしょう。
入出金管理表の作成
入出金管理表の作成も、RPAによる自動化が可能です。経理部門における出納業務では、企業と外部との間で発生した取引をすべて管理しています。現金管理や預金管理、残高管理は重要度の高い業務ですが、入力や照合など作業負担が大きい点も否めません。
RPAを活用すれば、入出金データを入出金管理表のフォーマットへ自動的に転記できるため、業務負担を軽減可能です。リアルタイムでの入出金の状況の反映も可能になり、管理クオリティの向上も期待できます。
RPAを上手に使いこなすコツ
経理業務において、RPAを上手に使いこなすためには、いくつかのコツを押さえておくのが重要です。以下はその一例になります。
・目的を明確にする
・業務フローを可視化する
・単純な業務から導入する
・サポートを活用する
・担当者を教育する
・効果測定をする
上記のコツをそれぞれ解説します。
目的を明確にする
まず重要になってくるのが、目的を明確にすることです。RPAは経理業務の課題を解決するために導入するものであり、どのような課題があるのかを把握しておく必要があります。例えば、残業時間の削減や業務の効率化などです。
加えて、効率化によって生まれた時間をどのように活用するのかも検討しておくと良いでしょう。単純作業から解放された時間を、より創造的な業務や戦略的な業務に割り当てることで、組織全体の生産性の向上や新しい価値創造につなげられます。
業務フローを可視化する
業務フローを可視化することも重要です。具体的には経理業務の棚卸を行い、作業内容や工数、流れなどを明確にします。
業務フローを可視化すれば、どの部分が人の手によって行われているのか、どの部分が自動化できるのかが明確になります。RPAで自動化できる作業を正確に把握すれば、導入の計画をより具体的に立てることが可能です。
単純作業の自動化だけでなく、業務プロセス全体の効率化にも役立てられるでしょう。
単純な業務から導入する
本記事でも触れたように、単純な経理業務からRPAを導入することも押さえておきたいコツです。複雑な作業の自動化は、技術的な困難が伴うケースが多く、導入のハードルが高くなる可能性があります。一方で単純な業務であれば、自動化のプロセスが比較的容易で、高確率での成功が期待できるでしょう。
導入後のリスクを最小限に抑えられる、組織全体でのRPAへの理解と受け入れを促進しやすいといった観点でも、小さな業務から自動化することが重要です。
サポートを活用する
RPAを提供しているベンダーには、さまざまなサポートを提供しているところもあるため、適宜活用することがおすすめです。具体的には操作方法のトレーニングといった基本事項から、自動化に最適な方法のコンサルティング、技術的な問題解決のサポートなどがあります。
特にRPAの導入が初めての組織にとって、どの経理業務を自動化するべきか、どのようにプロセスを設計するべきかなど、多くの不明点が考えられるでしょう。ベンダーのサポートを活用すれば、導入プロセスをより効率的に進められます。
担当者を教育する
RPAの導入において、担当者の教育はとても重要なポイントです。 RPAの操作には一定のITスキルが必要で、特に自動化する経理業務のプロセス設計やRPAツールのカスタマイズなどは、プログラミングの理解が求められます。
さらにRPAの導入は、現場の業務プロセスに直接影響を与えるため、現場の社員にRPAの目的と機能を理解してもらう必要があります。適切な教育プログラムとサポート体制を整え、計画的な導入を進めましょう。
効果測定をする
RPAの導入後、その効果を測定するプロセスが不可欠です。効果が実感できないと、経理業務における自動化の範囲を拡大することが難しくなります。
効果測定は、大きく分けて定量的効果の測定と定性的効果の測定の2種類です。定量的効果の測定とは、RPAの導入による効果を数値で評価することです。作業時間の削減やエラー率の低減などが該当します。
定性的効果の測定とは、数値以外の部分で、RPAの導入が業務の質や従業員の働き方に与えた影響を評価することです。例えば、従業員の満足度の向上などが該当します。
RPAを導入する際の注意点
経理部門でRPAを導入する際は、いくつかの注意点を意識しましょう。具体的には以下の3点が挙げられます。
・プログラミング経験者を確保する
・想定外のエラーに対処できる体制を整える
・運用マニュアルを用意する
上記の注意点を詳しく解説します。
プログラミング経験者を確保する
RPAのシナリオ作成はプログラミング経験者の方が効率的に行えるため、まずはそうした人材を確保することがおすすめです。プログラミングの知識があった方が、エラーが発生した際にも対処しやすくなります。
企業内にプログラミング経験者がいない、人材の確保が難しいといった場合は、外部の専門業者に委託するか、ベンダーの支援サービスを利用する方法もあります。専門的なスキルと経験を活用しつつ、RPAの導入と運用をスムーズに進めましょう。
想定外のエラーに対処できる体制を整える
プログラミング経験者の確保にも関連しますが、想定外のエラーに対処できる体制を整えることも重要です。RPAを導入した後、想定外のエラーが発生し、業務が滞ってしまうケースもあります。
想定外のエラーに迅速に対応するためには、エラー検知の仕組みや発生時の通知体制、解析と対処の手順など具体的な体制を構築しておく必要があります。ドキュメント化し、必要な担当者に共有しておくことも忘れないようにしましょう。
運用マニュアルを用意する
RPAの導入と運用において、運用マニュアルの策定は極めて重要なステップです。RPAの運用は、担当者が不在の場合でも円滑に進める必要があります。運用マニュアルがあれば、他のメンバーも対応できるため、業務の進行が滞るリスクを回避しやすくなるでしょう。
具体的には、RPAの使い方やエラーが発生した際の対処法、サービス提供会社への問い合わせ先などをまとめておくことがおすすめです。マニュアルは、新しい人材を教育する際にも役立ちます。
まとめ
RPAは経理業務の伝票入力や入金確認、振込先の登録など、さまざまな作業を自動化するために役立ちます。RPAを導入する際は、単純な作業から自動化しつつ、徐々に範囲を広げていくと良いでしょう。人材の確保や運用体制の整備などが必要になるため、事前に準備を進めつつ、計画的に導入することが重要です。
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@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)