会計監査を受ける際の注意点とは?担当者が事前準備する書類など合わせて解説
公開日:2023年6月12日 更新日:2024年4月17日
会計監査は企業や団体などが作成した会計書類が適切に作成、管理されているかを確認し、報告するために行われます。会計監査を受ける際は、あらかじめさまざまな書類を用意しておかなければなりません。
そこで今回は、会計監査の内容や準備、注意点などについて解説します。あらかじめ概要を把握しておくことで、スムーズに会計監査を受けられるので、これから監査対応の予定がある方は、ぜひ参考にしてください。
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会計監査とは
ひと言で会計監査といっても主体となる組織によって、より細かく分類することが可能です。ここでは、会計監査のうち主に第三者機関が行う外部監査について目的や法的根拠を解説します。
会計監査の目的
会計監査は企業や行政機関などが作成した財務諸表を会計監査人(公認会計士または監査法人)が第三者の立場から監査を行うことです。財務諸表の適正性について会計監査人が意見を表明することで、企業の利害関係者(ステークホルダー)が財務諸表に信憑性を持つことができます。
会計監査人は、調査の結果として以下の4種類のいずれかの意見を表明しなければなりません。
無限定適正意見 | 財務諸表に特段問題はない |
限定付適正意見 | 一部不適正な部分があるものの、財務諸表全体に影響するほどではない |
不適正意見 | 財務諸表全体に影響するほどの不適正な部分がある |
意見不表明 | 財務諸表が適正かどうか十分な証拠が入手できず、意見を表明できない |
会計監査の法的根拠
会計監査を企業があくまで内部のこととして自主的に行うか、法律に則って行うかによって分けると、内部監査と外部監査に分けられます。
内部監査とは、企業の内部監査室など独立した担当部署が主体となって自主的に行う監査のことです。一方、外部監査とは会社法・金融商品取引法など法律に基づき、一定の条件を満たす会社において行われる監査を指します。
詳細は後述しますが、大まかな違いは以下のとおりです。
項目 | 対象 | 目的 |
会社法による監査 | 会社法における「大会社」 | 株主・債権者の保護 |
金融商品取引法 | 上場会社 | 投資家保護 |
いずれにしても、比較的規模の大きい会社が対象になっていると考えましょう。
会計監査の種類
内部監査・外部監査のいずれにおいても会計監査は行われますが、根拠となる法律や目的によってもさらに細かく分類することが可能です。ここでは、会計監査を種類ごとに詳しく解説します。
外部監査
すでに触れたとおり、外部監査には会社法監査と金融商品取引法監査があります。ここでは、それぞれの監査の違いと役割について、詳しく解説します。
会社法監査
会社法監査は会社法第436条の規定により、株主や債権者の利益を保護するために実施される監査のことです。以下の4つの計算書類やその付属明細書が適切に作成されているのかを監査します。
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算表
・個別注記表
会社法監査の対象となるのは、資本金5億円以上、または負債額が200億円以上の大会社のみが対象です。大規模な会社の会計処理や業務プロセスに不正があった場合、利益を害される利害関係者(株主や債権者)の数も多く、社会的な影響も大きくなるためです。
なお、大会社は会社法の規定により会計監査人を設置し、内部統制の基本方針を決定する義務を負っています。
金融商品取引法監査
金融商品取引法第193条の規定により、上場企業は公認会計士もしくは監査法人による監査を受けることが義務付けられています。企業の財務会計処理や業務プロセスの機能を確認するのが大きな目的です。
一口に金融商品取引法監査といっても、財務諸表監査と内部統制監査があるので違いを押さえましょう。両者の違いを表にまとめました。
監査の種類 | 目的 | 対象会社 | 報告書名 |
財務諸表監査 | 財務諸表の適切性に関する意見の表明 | 有価証券報告書の提出会社 ・会社法対象会社 ・金融商品取引法対象会社 ・その他法定監査対象会社 ・任意会社 |
監査報告書 |
内部統制監査 | 内部統制報告書の適正性に対する意見の表明 | 上場会社のみ | 内部統制監査報告書 |
内部監査
内部監査とは企業内部で自主的に行われる監査で、企業内の独立した監査組織が実施します。社内の不正やリスクを早期に発見し、不祥事などを防止することが大きな目的です。また社内の規定やマニュアル、社内で掲げた経営目標に沿って業務が行われているかを確認する役割も果たしています。
一般的に内部監査として行われる監査の例は、以下のとおりです。
・会計監査
・業務監査
・デューデリジェンス監査
・システムセキュリティ監査
・コンプライアンス監査
・ISO監査
任意の監査になるため、内部監査自体の有無や実施する際の内容は、会社に一任されています。ただし、内部統制が義務付けられている場合は、内部監査を実施しなければなりません。
監査役監査
監査役監査とは、経営者や取締役などが職務を適切に行っているかを監査役がチェックすることです。
取締役会設置会社や会計監査人設置会社では、会社法により監査役を設置することが義務付けられています。監査役は株主総会で選任されますが、法律上特に必要なスキルや資格はありません。
しかし取締役の職務執行が正しいかを監査するのが職務であるため、相応の知識や経験が求められるでしょう。このため公認会計士や弁護士などの高度専門家が監査役になるケースが多くなっています。
また監査の範囲は定款で定めるため、会社によって異なります。監査役会設置会社に該当する会社では、業務監査と会計監査が実施される点も覚えておきましょう。
会計監査の主なチェック内容
会計監査においては、主に以下のチェックが行われます。どの項目も、財務諸表の内容が法令や規則に則っているかどうかを確認する上で非常に重要です。
・貸借対照表と損益計算書が総勘定元帳と一致しているか確認する
・売掛金・買掛金の残高と取引先の残高証明書を照合する
・現金・預金・借入金の残高と金融機関の残高証明書を照合する
・経理処理状態と帳簿組織・システムを確認する
・伝票の発行が正確に行われているか確認する
・勘定科目が正確に記載されているか確認する
・引当金が正確に計上されているか確認する
・固定資産の計上や除却処理を確認する
・実地棚卸が正確に実施されているか確認する
書類やデータの確認が中心ですが、担当者へのヒアリングも行われるため、対応できるようにしておきましょう。後述する書類をすぐに出せるようにしておくことはもちろん、当日対応する担当者への周知徹底も図るようにしてください。
監査に向けて担当者が事前準備する書類
監査に向けては、例えば以下の書類を用意しなければなりません。
・株主名簿、株主総会の議事録
・取締役会議事録
・決算書類
・総勘定元帳データ
・請求書や領収書、小口現金伝票などの書類・伝票
・賃貸契約書やローン契約書などの契約書類
・銀行の取引明細書、預金通帳
・棚卸表
・固定資産台帳
必要に応じて、これ以外の書類を用意するよう求められるケースもあります。外部監査では会計監査人(監査法人の担当者)から書類リストを渡されるので、それに従って準備を進めましょう。
書類だけでなく、会計監査人からのヒアリングに対応する担当者も手配しておく必要があります。担当者のスケジュールを把握しておきましょう。
なお、資料に過不足や不備があった場合、追加監査を行う可能性も出てきます。追加監査が必要となるとその分の費用もかかるため、過不足や不備がないよう、入念に準備をしておくことが大切です。
会計監査を受ける際の注意点
追加監査を行うことなく、予定どおりに終えることができるよう、会計監査を受ける際は事前の準備が重要です。ここでは、監査を受ける際に特に気をつけたいポイントを解説します。
書類に不備がないか確認しておく
会計監査を受ける前に、書類に不備がないか確認するとともに、万が一不備があれば解決しておきましょう。
会計監査では定款や経理規定、就業規則などの社内規定の確認も行われます。社内規定が最新のものになっていなかった場合、追加監査が必要になるなど、思いがけないトラブルも生じかねません。日頃から会計に関する書類は適切に管理し、会計監査において抜け・漏れが生じないようにしましょう。
書類の内容を把握しておく
書類の内容を把握しておくことも非常に重要です。会計監査では、経営者や担当者が会計監査人からヒアリングを求められることがあります。その際、会計監査人からの質問に適切に答えられるように、準備した書類の内容を把握しておかなければなりません。
スムーズに対応できるように、会計処理の根拠や経緯などについてメモをしておくとよいでしょう。不明点がある場合は、作成担当者に質問するなどして解決しておくことをおすすめします。
重点的に確認される項目を理解しておく
会計監査で重点的にチェックされる項目を理解しておき、スムーズに説明できるようにしておきます。特に、以下の項目は重点的にチェックされる可能性があります。
・貸借対照表や損益計算書と総勘定元帳の内容
・売掛金や買掛金の残高
・現金・預金・借入金の残高
・勘定科目
・引当金
・前期の決算数値との比較増減値
これらの項目は不正(担当者による意図的な数値の操作)や誤謬(単純なミス)などが生じやすいため、重点的にチェックが行われます。
まとめ
会計監査では、会計に関わる書類が適切に記載されているかのチェックが行われます。会計監査にスムーズに対応するためには、書類を適切に作成・管理しておくことが大切です。また会計監査を受ける際は、書類の内容を把握しておく必要があるため、事前に必要書類を確認しておきましょう。
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