【2023年度税制改正大綱】電帳法やインボイス制度の方針をわかりやすく解説!
公開日:2023年6月12日 更新日:2024年4月17日
2023年度(令和5年度)の税制改正では個人所得課税や資産課税だけでなく、法人課税や消費課税など法人業務に関わる税制改正、納税環境整備の見直しも行われています。
その中でも、特に電子帳簿保存法やインボイス制度については、経理業務をスムーズに進めるためにもぜひ押さえておきたいポイントです。
そこで今回は、2023年度税制改正大綱の中でも、主に法人業務に関わる税制改正について紹介します。税制改正大綱の基本から解説しますので、ぜひ参考にしてください。
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TOPICS
税制改正大綱とは
税制改正大綱とは、翌年度以降に予定している税制改正の方針をまとめたものです。毎年12月に翌年度の税制改正大綱が閣議決定され、財務省のホームページで公開されます。
政府は税制改正大綱を元に税制改正法案を作成して、翌年1〜2月の通常国会に提出し、その可否を問います。法案が可決するまでの流れは複雑ですが、衆議院・参議院の両方で可決すれば、法案として成立するのが原則です。法案が成立すれば、4月以降に順次施行されます。
税制改正大綱は一般の人でも読むことが可能です。税制改正大綱を読むことで、改正の要点がわかり、翌年以降の税制改正の概要がつかめます。
2023年度税制改正大綱の基本方針
2023年度税制改正の基本的な方針として、主に以下の内容が挙げられています。
・家計の資産を貯蓄から投資へ
・公平で中立的な税制の実現
・次世代への早期の資産移転および資産の再分配機能の確保
・法人課税や車体課税の見直し
・インボイス制度の円滑な実施に向けた改正
公平で中立的な税制といったマクロの話から、法人課税や社会課税、家計の資産といったミクロな視点までまとめられています。経理業務の面で特に注目したいのは、インボイス制度の円滑な実施に向けた改正です。
インボイス制度をそのまま導入してしまうと、多くの事業者に影響を与えてしまい、混乱が生じかねません。そこで今回の税制改正大綱では、スムーズに導入するための負担軽減措置について触れています。
2023年度税制改正大綱の概要
2023年度税制改正大綱の概要は、以下の表のとおりです。
項目 | 改正内容 |
個人所得課税 | ・NISA制度の抜本的拡充・恒久化 ・スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設 ・極めて高い水準の所得に対する負担の適正化 ・特定非常災害に係る損失の繰越控除の見直し |
資産課税 | ・資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築等 |
法人課税 | ・研究開発税制の見直し ・企業による先導的人材投資に係る税制措置 ・オープンイノベーション促進税制の見直し |
消費課税 | ・インボイス制度の円滑な実施に向けた所要の措置 ・自動車重量税のエコカー減税の見直し ・承認酒類製造者に対する酒税の税率の特例措置の創設 |
国際課税 | ・グローバル・ミニマム課税への対応 |
納税環境整備 | ・電子帳簿等保存制度の見直し ・課税・徴収関係の整備・適正化 |
(令和5年度税制改正|財務省を元に、一部を抜粋・編集して作成)
上記のうち、法人業務に関係する税制改正としてインボイス制度、電子帳簿保存制度の見直し、法人課税に関する項目の3つを詳しく解説します。
インボイス制度の実施に向けた負担軽減措置
2023年(令和5年)10月1日から実施されるインボイス制度について、主に小規模事業者に対する負担軽減措置が講じられる予定です。ここでは、主な負担軽減について5つのトピックに分けて紹介します。
2割特例の導入
まず押さえておきたいのは2割特例の導入です。免税事業者からインボイス発行事業者へ移行した場合の負担軽減のため、納税額を売上額の2割に軽減するといった特例が導入されます。
例えば、売上が700万円、納税額が70万円になっている場合、この軽減措置によって納税額が14万円に軽減されます。一定の割合で軽減するため、本来の納税額が大きければ大きいほど節税効果も期待できるでしょう。
ちなみに現在は、小規模事業者に配慮した特例として簡易課税の方法も認められています。しかし2割特例の活用により、売上を把握するだけで消費税の申告が可能となり、簡易課税と比べて事務負担が軽減されます。
なお、2割特例の適用期間は2023年10月1日から2026年9月30日です。
事務負担の軽減措置
一定規模以下の事業者に配慮した、事務負担の軽減措置も実施されます。具体的には、1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入税額控除が可能になるといった措置です。
この軽減措置の対象は、基準期間(前々年・前々事業年度)の課税売上高が1億円以下の事業者です。もし基準期間の課税売上高が1億円を超えていても、前年・前事業年度開始の日から6カ月間の課税売上高が5,000万円以下であれば、軽減措置の対象となります。
課税売上高の条件が1億円になっていることもあり、比較的規模の小さな事業者であれば、事務負担の軽減措置を受けられる可能性は高いといえるでしょう。適用期間は、インボイス制度の施行から6年間(2029年9月30日まで)です。
返還インボイスの交付義務の見直し
2023年度税制改正大綱では、返還インボイスの交付義務の見直しも行われています。返還インボイス(適格返還請求書)とは、商品・サービスの返品や値引きなどで売上の返還をする場合に、インボイス発行事業者(売り主)の交付が義務付けられている書類です。
例えば、手数料無料などで購入者から料金を支払ってもらった場合、売り主は返還インボイスを発行しなければなりません。購入者にとってはメリットが大きいものの、売り主にとっては、手数料軽減による経済的負担、返還インボイス発行の事務負担の2つが発生してしまいます。
今回の改正では事務負担軽減のため、1万円未満の少額な値引きについて、返還インボイスの交付が免除されます。適用開始日はインボイス制度と同じく2023年10月1日です。
適格請求書発行事業者の登録申請書の提出期限
適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録申請書を提出する際、期限が変更される点にも注意しましょう。免税事業者が課税期間の初日から登録を受けようとする場合、1カ月前までに申請書を提出する必要があります。
しかし改正後は15日前までに変更されています。これにより、例えば決算月の関係で早めに提出するのが難しいといった事業者であっても、比較的ゆとりを持って申請書を提出できるようになりました。
ちなみに2023年10月1日以降に登録する場合であっても、経過措置を受けられます。具体的には、登録申請書に提出日から15日経過後の日を登録希望日として記載すると、その日に登録を受けたことになります。仮に登録希望日後に登録された場合であっても、希望どおりに登録できるのが原則です。
「困難な事情」の記載が不要
「困難な事情」の記載が不要になったのも、今回の改正で見逃せないポイントです。従来は2023年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合、2023年3月31日までに登録申請書を提出する必要がありました。
もし申請期限後に登録申請書を提出する場合、「困難な事情」を記載する必要がありましたが、改正後は記載しなくても申請できるようになります。要するに登録期限の実質的な緩和です。
事業者によっては適格請求書発行事業者になるかどうか、悩ましい状況にあるケースもあるでしょう。さまざまな事情により適格請求書発行事業者の登録を受けていない事業者に対して、登録期限後でも柔軟に対応する方針です。
電子帳簿等保存制度の見直し
納税環境整備のため、電子帳簿等保存制度の見直しが行われるのも今回の要点です。具体的には、電磁的記録の保存制度の見直しとスキャナ保存の要件緩和の2点です。ここではそれぞれのポイントについて解説します。
電磁的記録の保存制度の見直し
まずは電磁的記録の保存制度の見直しです。電子取引を行った場合、原則として電子取引データを保存しなければなりません。2023年12月31日までは、電子取引データを出力した書面の提示や提出に応じることで、電子取引データの保存の代わりとする経過措置が講じられています。
しかし今回の改正では適用期限(2023年12月31日)の到来後、経過措置は廃止されることになりました。
ただし保存要件に従って電子取引データを保存できなかったケースも想定されます。もし事業者に相当の理由があると認められた場合は、電子取引データの出力書面の提示・提出や電子取引データのダウンロードに応じることにより、保存要件が不要となります。
スキャナ保存の要件緩和
スキャナ保存も制度の利用促進のため、以下のとおり要件が緩和されます。
・記録事項の入力者等に関する情報の確認要件が不要
・解像度、階調、大きさの保存が不要
・帳簿との相互関連性を求める書類を契約書、領収書、請求書などの重要書類に限定
例えば改正前は、スキャナ保存の情報に関して「解像度200dpi以上」「256階調」などの条件が指定されており、すべての保存書類が帳簿と相互に関係している必要がありました。改正後はこうした条件が緩和されています。
なおこちらの要件緩和は2024年(令和6年)1月1日以降に保存が行われる国税関係書類に適用されます。
法人税の課税に関する主な変更点
法人税の課税に関する主な変更点は、以下のとおりです。
・研究開発税制の見直し
・「研究開発型スタートアップ企業」の範囲拡大
・先導的人材投資に係る税制措置
・オープンイノベーション促進税制の見直し
・中小企業の設備投資関連税制の新設・延長
・DX投資促進税制要件の見直し・延長
上記6つの変更点について、それぞれ詳しく解説します。
研究開発税制の見直し
まずは研究開発税制の見直しです。従来は研究開発費の税額控除について、上限が一律でした。今回の改正では研究開発費の増加を促すために、試験研究費の増減に応じて税額控除率カーブを見直しています。
さらに新制度では、試験研究費の増減に応じて税額控除の増減も変動させるようにしています。従来は試験研究費の増減率に関わらず、控除額が25%で固定されていました。しかし改正後は「加算特例」「減算特例」が導入され、控除上限が20%〜30%で調整されるようになっています。
新制度の導入により企業のインセンティブが強化され、研究開発費の増加が期待されます。
「研究開発型スタートアップ企業」の範囲拡大
税制改正によって、「研究開発型スタートアップ企業」の範囲が大幅に拡大するのも重要なポイントです。改正前は以下のような企業が対象でした。
・産業競争力強化法により経済産業大臣が認定したベンチャーファンドから出資を受けたベンチャー企業
・研究開発法人・大学発ベンチャー企業で一定の要件を満たすもの
改正後は、以下の条件をすべて満たす企業も「研究開発型スタートアップ企業」に含まれます。
・未上場の株式会社
・設立15年未満の企業
・売上高研究開発費比率10%以上の企業
・ベンチャーファンドまたは研究開発法人の出資先の企業
これにより、幅広いスタートアップ企業との共同研究・委託研究が盛んになり、イノベーションや産業の発展に寄与すると期待されています。
先導的人材投資に係る税制措置
先導的人材投資に係る税制措置も見逃せないポイントです。昨今ではDX時代が叫ばれており、人材不足の問題が深刻化する中、いかに優秀な人材を獲得(または育成)するかが喫緊の課題です。
企業の成長を先導するような優秀な人材を創出するために、以下のような税制上の優遇措置を設けています。
・企業が学校法人の設立費用として寄附金を支出した場合、全額損金算入が可能となる枠組みを設ける
・外部からの研究人材の雇用に対し、研究開発税制の優遇措置を設ける
(一般の試験研究費よりも高い20%の税額控除率と、10%の税額控除上限の適用を可能にする)
・DX投資促進税制でのデジタル人材の育成や確保に関連する事項を要件化する
オープンイノベーション促進税制の見直し
オープンイノベーション促進税制の見直しも、重要な改正点です。具体的には、既存企業がM&Aのためにスタートアップ企業の既存株式を取得した場合に、オープンイノベーション促進税制の適用を可能にします。
本来のオープンイノベーション促進税制とは、スタートアップ企業の新規発行株式を取得する際、一定要件を満たせば「その株式の取得価額の25%を所得控除する」といったものです。改正後はM&Aでも所得控除が受けられるようになります。
さらにM&Aから5年以内に成長要件を満たした場合は、減税が継続します。スタートアップ企業のM&Aや成長投資につながるとして、大きく注目されている改正点です。
中小企業の設備投資関連税制の新設・延長
中小企業の設備投資関連税制の新設・延長も見逃せません。具体的には、まず「中小企業投資促進税制」「中小企業経営強化税制」の適用期限が2年間延長されることになりました。詳しくは以下の表のとおりです。
税制 | 設備の種類 | 概要 |
中小企業投資促進税制 | ・ソフトウェア(70万円以上) ・機械装置(160万円以上) |
30%特別償却または税額控除7%(資本金3,000万円超1億円以下の法人の場合は30%特別償却のみ) |
中小企業経営強化税制 | ・ソフトウェア(70万円以上) ・機械装置(160万円以上) ・器具備品・工具(30万円以上) ・建物付属設備(60万円以上) |
即時償却または税額控除10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人の場合は税額控除7 %) |
(令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について|経済産業省を元に、一部を抜粋・編集して作成)
上記に加えて、「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置」が新設されることになりました。この特例措置により、赤字を抱えている事業者に対して、投資や賃上げのインセンティブを強化しています。
DX投資促進税制要件の見直し・延長
DX投資促進税制の要件を見直した上で、適用期限を2024年度末(令和6年度末)まで2年延長されることも、押さえておきたいポイントです。対象設備はソフトウェア、繰延資産、器具設備、機械装置で、税額控除または特別償却が認められています。
認定要件は以下の表のとおりです。
デジタル(D)要件 | ・データ連携(新しく取得するデータと内部データを連携する) ・クラウド技術の活用 ・情報処理推進機構が審査する「DX認定」の取得(レガシー回避・サイバーセキュリティ等の確保、デジタル人材の育成・確保) |
企業変革(X)要件 | ・全社レベルでの売上上昇が見込まれる ・成長性の高い海外市場の獲得を図っている ・全社の意思決定に基づいている(取締役会等の決議文書添付等) |
(令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について|経済産業省を元に、一部を抜粋・編集して作成)
DX投資促進税制の要件や対象設備については、経済産業省の資料で詳細をご覧ください。(24ページ参照)
その他、法人に関係する主な改正点
その他、法人に関係する改正点として押さえておきたいポイントは、以下の5つです。
・グローバル・ミニマム課税の導入
・酒税の特例軽減措置の創設
・エコカー減税の据え置き
・法人が保有している暗号資産への課税緩和
・無申告加算税の引き上げ
上記のポイントを、それぞれ詳しく解説します。
グローバル・ミニマム課税の導入
2021年10月にOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」の国際的な合意により、グローバル・ミニマム課税が導入されます。グローバル・ミニマム課税とは、グローバル展開をする大企業の日本法人に対し、日本の法人税以外に追加で課される税金です。
例えばグローバル企業が法人税をなるべく抑えたいと考えている場合、税率の低いタックスヘイブン国に子会社を子会社を設立し、高い節税効果を実現しようとするケースがあります。グローバル・ミニマム課税は、要するに国際的な課税強化であり、こうした企業にも最低限の課税ができるシステムです。
なおグローバル・ミニマム課税は、2024年4月1日以降の事業年度から適用されます。
酒税の特例軽減措置の創設
今回の改正で、承認酒類製造者(税務署長の承認を受けた酒類製造者)に対し、製造規模に応じて一定の酒類に対する酒税を軽減します。現行の「中小事業者に対する酒税の特例措置」は廃止となり、改正後の特例措置移行に伴って経過措置が実施されます。
軽減割合は以下の表のとおりです。
当年度酒税累計額 | 軽減割合 |
5,000万円以下の金額 | 20% |
5,000万円を超え8,000万円以下の金額 | 10% |
8,000万円を超え1億円以下の金額 | 5% |
(令和5年度税制改正の大綱(4/10)| 財務省を元に作成)
なお「当年度酒税累計額」とは、その年度分の酒類について、酒税法などで規定されている税率によって算出した額の累計を指します。
エコカー減税の据え置き
自動車重量税の免税等の特例措置(エコカー減税)について、2023年12月31日まで据え置きになるのも、今回の改正のポイントです。エコカー減税とは、環境に良い車を購入した者に対して税制上の優遇措置を与えるものです。
据え置きの期間が終わった後は、制度の対象となる2030年度燃費基準達成度の下限を、3年間で段階的に80%まで引き上げることになりました。自動車税・軽自動車税の環境性能割も、現行の税率区分を2023年12月31日まで据え置き、同様に段階的な引き上げを実施します。
自動車税・軽自動車税の種別割におけるグリーン化特例については、3年間延長されます。
法人が保有している暗号資産への課税緩和
法人が所有している暗号資産の課税については、緩和措置が実施されます。本来、法人が保有している暗号資産は、事業年度末の時点で含み益があれば課税対象です。例えば事業年度末時点で現金化されていなかったような場合でも、含み益に対して納税の義務が生じます。
2023年の税制改正大綱では、暗号資産の自社発行分について一定の要件を満たせば期末評価課税の対象外です。
要件は以下のいずれかです。
・発行から継続して保有し、他者に移転できない技術的措置がとられていること
・信託財産としており、譲渡制限が行われていること
無申告加算税の引き上げ
無申告加算税の引き上げ、および重加算税の加重も見逃せないポイントです。無申告加算税とは、正当な理由がなく期限内に確定申告をしなかった際に、課される税金です。
改正前の税率は、15%(税額が50万円を超える部分については、20%)とされていました。改正後は高額無申告の納税額が300万円を超える部分について、無申告加算税の割合を20%から30%に引き上げられます。
さらに繰り返し無申告行為を行った場合に課される重加算税も、10%加重されます。改正前の税率は最大でも40%でしたが、改正後、仮装・隠蔽の場合の重加算税率は50%です。
税制改正による経理業務への影響と対応策
2023年の税制改正ではインボイス制度の導入が始まるため、請求書の様式の変更やシステムの変更など、事前準備を進めておく必要があります。
また先ほども触れたように、電子取引データの保存も2023年12月末までに対応しなければなりません。ここでは今回の税制改正が経理業務へ与える影響と、その対応策について解説します。
請求書や帳簿などの記載事項の変更
まずは請求書や帳簿などの記載事項の変更です。インボイス制度の開始に伴い請求書や納品書、帳簿などの記載事項を見直す必要があります。
例えばインボイスを発行する際は、「区分記載請求書」に登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額などを記載しなければなりません。帳簿と区分記載請求書の記載事項は以下の表のとおりです。
帳簿の記載事項 | 区分記載請求書の記載事項 |
・課税仕入れの相手方の氏名または名称 ・取引年月日 ・取引内容(軽減税率の対象品目である旨) ・対価の額 |
・請求書発行者の氏名または名称 ・取引年月日 ・取引内容(軽減税率の対象品目である旨 ) ・税率ごとに区分して合計した税込対価の額 ・請求書受領者の氏名または名称 |
(適格請求書等保存方式の概要 | 国税庁を元に、一部を抜粋・編集して作成)
税額計算方法の変更
税額計算方法が変更される点にも注意が必要です。2023年10月1日以降は、売上税額と仕入税額の計算方法について、「積上げ計算」または「割戻し計算」を選択できるようになります。
売上税額の計算は割戻し計算で行うのが原則ですが、適格請求書発行事業者であれば積上げ計算も可能です。もし売上税額を積上げ計算した場合は仕入税額も積上げ計算にする必要があります。
一方の仕入税額の計算は積上げ計算が原則ですが、割戻し計算も特例で可能になります。売上税額の計算と同様に、仕入税額を割戻し計算した場合は、売上税額も割戻し計算しなければなりません。このあたりの計算方法については、あらかじめ方向性を固めておくとよいでしょう。
免税事業者への対応
インボイス制度の導入によって、免税事業者への対応も変わってきます。インボイス制度開始後に免税事業者と取引をすると、仕入れ先と税務署の2つに消費税を納めなければなりません。そのため取引先に免税事業者がいる場合は、対応方針を決める必要があります。
インボイスを発行してくれる事業者のみ取引するといった方針も可能ではあります。ただし免税事業者であることを理由に、一方的に価格の引き下げや取引の中止を行うと、独占禁止法や下請法に抵触するおそれがあるため注意が必要です。
インボイス制度が導入されたとしても、消費税免税などのメリットを取り、免税事業者として活動する層は一定数いることが想定されます。思わぬ取引先の取りこぼしが発生しないよう、慎重に方針を考えておきましょう。
電子取引データの保存
本記事でも触れているように、電子取引データの保存に対する対応も必要です。2021年度の税制改正により、2022年1月1日から電子取引データの保存が義務付けられました。
2023年12月末までは宥恕期間(経過措置として紙での保存が認められる期間)とされていますが、経過後は電子データの保存に対応していないと罰則を受ける可能性があります。適用要件を確認し、適切な方法で保存するための環境をスムーズに整備しましょう。
まとめ
2023年の税制改正では、インボイス制度や電子帳簿保存法の一部見直しが行われます。経理業務に与える影響も大きいため、税制改正大綱の内容を把握し税制改正に応じた業務の見直しが必要になるでしょう。
特に、2023年度はインボイス制度の導入が開始されるため、社内ルールの策定や業務フローの見直しなども必要になってきます。煩雑化する経理業務を効率的に進めるためには、コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』の導入がおすすめです。
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