財務会計と管理会計の違いとは?共通点や目的も合わせて解説
公開日:2022年10月28日 更新日:2024年4月17日
企業会計を大きく分けると、財務会計と管理会計に分かれます。目的や具体的な業務も異なるので、それぞれの違いをよく理解することが重要です。
そこで本記事では、財務会計と管理会計の違いや共通点、目的などを詳しく解説します。この記事を読めば、財務会計と管理会計の違いがつかめ、実際に業務を行う際にも理解が深まるはずです。経理部門全体の業務効率化を進めるためにも、業務内容を把握しておきましょう。
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TOPICS
企業会計とは何か
企業会計とは、その企業が行っている事業について、成果を一定の尺度に基づき測定し、分析することです。企業会計は目的や業務内容によって以下の2つに分かれます。
・財務会計:株主など外部の利害関係者に経営状況などを報告する
・管理会計:役員など社内の利害関係者へ情報提供を行う
なお公正な処理を行うためには、企業会計原則をはじめとした会計基準や会社法、金融商品取引法などの関連法規を守らなければなりません。特に重要なのが企業会計原則で、以下の7つの原則から成り立っています。
・真実性の原則
・正規の簿記の原則
・資本取引・損益取引区分の原則
・明瞭性の原則
・継続性の原則
・保守主義の原則
・単一性の原則
財務会計と管理会計それぞれの目的
財務会計と管理会計はどちらも企業会計の一部ではあるものの、目的はそれぞれ異なります。ここでは、財務会計と管理会計の違いについて詳しく解説します。
財務会計の目的
財務会計の目的は、社外利害関係者への情報発信です。株主や金融機関など、社外の利害関係者へ経営状況を伝えることが目的になっています。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの各種書類も、財務会計に基づいて作成される書類です。
財務関係の書類はさまざまな利害関係者が見るので、比較検討できるよう一定のルールに則って作成しなければなりません。そのため、会計基準や金融商品取引法などの法律に沿った手続きが必要です。
管理会計の目的
一方、管理会計は企業が経営に活かす目的で行うものです。財務会計のように、企業外部の利害関係者が見るものではないため、統一されたルールもありません。そのため、企業によってデータの収集方法や作成する書類も異なります。
管理会計を行う主な目的は次のとおりです。
・事業部門を管理する
・従業員を管理する
・設備投資の意思決定を行う
・販売価格を決める
管理会計は必須ではありませんが、企業が事業を継続していくために重要な業務といえます。
財務会計と管理会計の違い・共通点
すでに触れたとおり、財務会計と管理会計は利用目的が異なるため、作成する資料にも違いがあります。財務会計の場合は貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書を作るのに対し、管理会計では予算や原価計算などの情報をまとめた資料を作ることになるでしょう。
また、財務会計は会社法や金融商品取引法、法人税法などの法律や会計基準を守らなければなりませんが、管理会計にはそのようなルールはありません。どちらも帳簿に記録された内容を元に必要な資料を作る点は変わりませんが、細かい部分ではだいぶ異なります。その他の相違点も含め、わかりやすくするために表にまとめました。
財務会計の2つの機能
財務会計には、情報提供機能と利害調整機能という2つの機能があります。企業にとってはどちらの重要な機能です。それぞれの機能について解説します。
情報提供機能
情報提供機能とは、財務諸表などを通じ、企業の現状を利害関係者に報告する機能のことです。例えば銀行が融資をする際は、企業に返済能力があるかを判断しなければなりません。そこで財務諸表を通じて企業の財政状態や経営成績を読み解き、正確な情報を得て判断に役立てています。
また株主などの投資家が投資判断をする際にも財務諸表は重要な情報源です。財務諸表を見れば会社の経営状況が分かるため、投資する価値があるかどうかを見極めるための資料になります。
利害調整機能
一方、利害調整機能とは、企業関係者の利害を調整する機能です。例えば株主はより多くの利益を配当として受け取れるのが望ましいでしょう。しかし配当金が大きくなると債権者にとっては、資金の返済が受けられないリスクが増すことになります。また役員にとって自分たちへの報酬の支払いが減るリスクにも結びつくのです。
財務諸表により株主への配当や債権者への返済、役員への報酬の支払がどのように行われているのかを確認できるようになります。
財務会計の主な業務内容
一口に財務会計といっても、実際はさまざまな業務が行われています。大きく分けると仕訳・記帳、固定資産の管理、決算書の作成などです。ここでは、これらの3つの業務について詳しく解説します。
仕訳・記帳
まず、注文書や請求書など書類の作成、領収書の管理、精算などを取引ごとに仕訳や記帳する業務が挙げられます。
仕訳とは、勘定科目を使って企業の取引を貸方と借方に記録することです。また記帳とは仕訳の記録をまとめたもので、仕訳帳に基づき勘定科目ごとに総勘定元帳へと転記する作業を指します。仕訳や記帳は多くの企業でシステム化されており、システムに入力して業務を進めるのが一般的です。
固定資産の管理
企業が所有する土地、車両、パソコン、コピー機などの固定資産の管理も、財務会計における業務の一つです。固定資産を取得する際は社内規定に基づき申請をし、実行(購入)や支払いを行います。
また固定資産を使用している間は、減価償却費の計上、現物管理、実在調査、資産評価などの作業が必要です。その後、固定資産を破棄したら帳簿から除去しなければなりません。固定資産の管理は、企業の利益と資産の額を正しく把握する上で重要な意味を持ちます。
決算書の作成
決算月になったら、伝票や仕訳帳に基づき決算書を作成しなければなりません。法人の場合、事業年度は自由に決められますが、3月決算としている場合が多いようです。
決算書としてさまざまな書類を作成しますが、その中でも財務三表と呼ばれる損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書は非常に重視されます。企業外部の利害関係者に当年度の営業成績や利益を報告する資料として提供されるためです。
・損益計算書(P/L):一定期間における企業の経営成績を表す書類
・貸借対照表(B/S):ある時点における企業の資産状況を表す書類
・キャッシュフロー計算書(C/F):一定期間における企業のお金の流れを表す書類
管理会計の主な業務
管理会計において、主に行われる業務は予算管理、原価管理、経営管理、資金繰り管理の4つです。それぞれの業務について詳しく解説します。
予算管理
予算管理とは、経営計画に基づき作成した予算と各部門の実績を比較し、進捗状況の把握や阻害要因の分析を行う業務です。具体的には、次の4ステップで進められます。
・予算編成(Plan):経営目標を明確にし、達成するための手段や経営資源の分配方法を具体的に計画する
・実行(Do):予算計画に基づき業務を実行する
・分析(Check):予算と実行状況の比較、分析をする
・改善(Action):比較、分析の結果に従い、改善を行う
前提として、保有する資産を把握し、事業運営に使える予算があるかを見極めなければなりません。また、予算計画に基づいた売上、原価、経費、利益の種類ごとの管理も必須です。
原価管理
原価管理とは、製品を作る際にかかる原価を算出し、実際の原価と比較することでコスト改善を図ることです。コストマネジメントとも呼ばれます。利益の確保やリスク管理を行うことが主なねらいですが、無駄なコストや損益分岐点の把握もできるのもメリットです。具体的には、原価を固定費と変動費に分類し、損益分岐点の分析や製品の採算性、原価予測などを行います。原価管理に用いる項目は業種によっても異なるので、適宜対応が必要です。例えば製造業においては標準原価と実際原価の差異や仕掛原価、個別原価などを管理します。また建設業では工事発生基準、進行基準、完成基準などの会計方法があり、それぞれに合わせた項目での管理が必要です。
経営管理
経営管理とは、企業が予算や目標を達成するために計画を策定し、計画を実行するための活動をモニタリングすることです。モニタリングの結果を踏まえ、内部統制の強化、組織再編、経営分析など目標達成に必要な体制を整えます。企業が持つ資源で最大限の結果を出せるようにするのが、経営管理の最終的な目的と考えましょう。
なお、経営管理は業務範囲によって以下の5つに細分化することが可能です。
・生産管理:生産活動の効率化を目指す
・販売管理:お金と物、またはサービスの流れを管理する
・労務管理:従業員の働く環境を管理する
・人事管理:目的達成のため効果的な人材配置、育成、情報統制を行う
・財務管理:企業経営に必要な資金や資産の管理を行う
資金繰り管理
資金繰り管理とは、資金の過不足を調整し、問題なく会社が運営できるようにするために企業における入出金を管理することをいいます。現金、当座預金、定期預金、譲渡性預金など簡単に換金できるものを中心に、資金の流れを正確につかむために行う作業です。資金ショートを防止したり、資金運用を検討したりする上では非常に重要なプロセスとなります。資金繰り管理が適切にできていれば、問題が起きてもすぐに気付くことができ、必要な対応を迅速に進めることが可能です。なお、資金繰り管理においては、資金繰り表が非常に重要になります。資金繰り表は、現在から先の未来にかけての資金の流れを把握するために作られる書類です。
管理会計を導入するメリット
財務会計とは違い、管理会計は企業が独自に行うものであるため、導入するかの判断も企業に委ねられています。しかし、導入により得られるメリットが大きいため、検討する価値はあるでしょう。ここでは、管理会計を導入するメリットを解説します。
経営判断に役立つ
企業が管理会計を導入するメリットの一つに、経営判断に役立つことが挙げられます。管理会計では、会計報告書や資料を各部署で作成し、経理が取りまとめるのが一般的な流れです。管理会計を行うことで会社全体の経営状況が明らかになり、具体的な経営判断が可能になります。経営上の改善点を発見したり、商品のリニューアルなど将来の事業計画を立てたりできることが大きなメリットです。財務会計とは違い、管理会計には会計処理の方法に決まりはありません。社内で必要な情報を得ることが目的であるため、工夫次第で経営判断に役立つ有用な情報が得られます。有用な情報を得るためには、経営判断に必要な情報の吟味と経理方法のルール作りが欠かせません。
コスト管理ができる
管理会計の導入により、コスト管理もできるようになります。管理会計で行われる原価管理により、原材料費や人件費などのコスト管理が可能です。週・月単位でコスト管理をすれば、業務の進捗状況も把握できます。
また継続的な管理により無駄なコストを特定できる可能性があります。コストカットができればその分利益が増えるため、企業にとっては大きなプラスです。さらに最終コストを分析すれば、効果的な予算の使い方も掴めます。企業が持てるヒト・モノ・カネは有限です。だからこそ無駄を省き、より高い成果を得るためにもコスト管理を行う意義はあるでしょう。
経営視点で行動できる
各部門に所属する従業員が経営視点で行動できるようになるのも、管理会計を導入するメリットの一つです。各部門が力を発揮しないとなかなか成果に結びつきません。企業全体として利益を得るためには、部門を越えた連携が必要です。
従業員が経営視点を持つためにも、各支店、部門に管理会計を導入しましょう。部署別や事業別、商品別などの売上や経費などが明確になるため、課題解決の糸口になります。コストや業務の効率性、目標の達成状況や課題を意識し、改善に向けた行動を取るきっかけになるのです。各部門の分析力や問題解決力が高まり、企業の経営にとってもプラスの効果がもたらされます。
数値目標を立てやすくなる
管理会計を行うことで、具体的な数値目標を立てやすくなります。従業員に業務目標を立てるように伝えても目標を明確化できなければあまり効果が実感できません。
しかし数値目標に落とし込めば、進捗度や達成度が一目で把握できます。従業員にとっては成果がわかりやすいので、モチベーションアップにもつながるでしょう。また評価する側にとってもプラスになります。数値目標であれば客観的な評価が可能です。個人的な経験や感情に頼らなくて済むため、フェアな評価が行えます。
管理会計を導入する際の注意点
管理会計を導入するメリットは数多くありますが、注意すべき点もあります。そもそも管理会計には、財務会計のように法律上の規定が特に設けられていません。企業の事情に合わせて管理会計の方法が決められます。そのため、あらかじめ統一したルールを社内で作り、適切に運用することが求められます。
加えて、社内のチェック機能が働いていないと、不透明な会計になるおそれもあるので要注意です。管理会計が適切に機能しているのかを客観的に判断できる仕組みづくりもしましょう。公認会計士や税理士などの専門家に、管理会計の運用状況に関するチェックをしてもらうのも効果的です。
会計業務を効率化するには
管理会計の導入を検討する際はもちろん、折に触れて会計業務の効率化についても考えてみましょう。会計・経理の業務内容は多岐にわたる上に、従事する従業員への負担も大きくなりがちです。財務会計は、外部に公開する書類を作成するための業務です。法律で定められた期限までに仕事を終えなければならない上に、絶対にミスはできません。
一方、管理会計で作成する書類は外部に公開はされません。しかし経営上の意思決定の基礎となるデータを集計する作業でもあるため、やはりミスは禁物です。ミスが許されない状況で担当者への負担を減らすなら、業務の効率化が必須でしょう。可能な限りIT化、システム化を行うことも一つの方法です。
まとめ
財務会計と管理会計とでは、業務の目的がまったく異なります。どちらも会社の健全な運営に関わる重要な業務であるため、正確に遂行しなくてはいけません。しかし、時間や人員を無限に投入できるわけではないので、業務を効率化するのも重要な課題となります。効率化のためにはシステムを導入すると良いでしょう。
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